短編

□小鬼は優しいママが欲しい
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着信あり、記憶はなし

 昼寝から目覚めた獣に昼食の煮込みうどんを作って食べさせている間、自分のスマホを確認した。着信履歴の一覧を見て、「うん?」と首を捻る。
 おかしい。寝ている時に来たであろう彼女からの着信が、不在着信になっていない。寝ていないなら取れないはず。かといって、電話に出た記憶もない。夢と現実がごった煮になるほど、深い眠りをしていたとも思えない。
 うーんと首を捻っていると、煮込みうどんを美味しそうに啜る子どもの姿が目に入った。
 子どもは寝ている間、普段しない家事を一通り行い、その事を先ほど褒めたばかりである。褒められた子どもは、「当然」と胸を張っていた。
 まさか……この子どもが出た……?
「なあ」
「なーにー?」
「彼女の電話、出ただろう」
 疑問ではなく、断定する口調で問う。
 うどんを吸うところだった子どもは、一瞬動きを止めた後、何も聞かなかったふりをして、うどんを啜った。
「おい……」
「んんーーーー。『パパ寝てるよ』って言っただけだよ」
「本当か?」
 履歴を見る限り、十分ぐらい話してるんだが。
 疑いの目を向けると、子どもは「本当だよ」と頬を膨らませた。
「ちょっとは子どもを信じてよね」
「時々、斜め上の行動するから無理だな」
「失礼な。予測範囲内で行動してますよーだ」
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