蝶の王子様
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「それで、そのお祖父様方が地上へ何しに?」
腕を組み、三人を見据えて問う。
「うーん。地上の動きが活発になって来たから、ちょっと様子見に」
スイランが答える。
彼らの住む世界と、クウラたちが住む世界は、大きな山によって隔てられている。
地上にある山の中には、冥府と繋がっているものがあり、クウラを育てた者たちは霊山と呼んでいた。
死んだ者は、霊山から冥府に入り、針山を7日間かけて越え、川岸にある裁判所で最初の裁判を受けた後、川を渡る。
生きる者にとっては、遠い世界だ。
その世界にも地上の情報が届いているとは。自分たちの知らない所で、話が大きくなっている気がする。
「色々見て回ったが、やっぱりきな臭いのはヨシアキだなあ。アヤキも俺たちも面倒な男に目をつけられたものだ」
苦笑するフウエンを見て、クウラとレオンは顔を見合わせる。
再び祖父たちに視線を戻し、口を開いた。
「ヨシアキに力を与えたの、先代だってシンラさんが言ってたよ」
「ああ、それ」
「俺らも知らないんだよなあ。丁度、山越をしていた時だし。口も頭も堅いから、全くと言っていいほど話さないし」
双子が続けて言い、後方に居る先代ことマスラを見やる。
マスラは構わず、静かに遠くを見つめたままだ。
二人の話を聞くに、マスラとヨシアキの会合があったのは、双子が亡くなってから一週間経たない頃。
マスラと再会を果たしたのは、彼が亡くなって冥府の裁判を全て終えた後。
だから、双子は自分たちが死んだ後の事をよく知らない。
マスラも語りたがろうとしない。
昔話に花を咲かせる事はあっても、親友の死を迎えた後の事は一切話さない。
「会ったのは本当なんだね」
「まあな」
ようやく、マスラが口を開く。
会合の内容を聞けるかと、期待に満ちた目をクウラとレオンは向けるが、直ぐ肩を落とす事になった。
「だが、内容については教えられない。天命で死を迎えた者は、地上の流れに干渉するなと言われているからな」
「大事な事なのに……。黄泉の人って頭堅いのな……」
「黄泉の国ってのは、そういう所さ」
落胆するレオンに、スイランが続けた。
こうして直接会って、話しているだけでも結構許されるかどうかの限界である。もしかしたら、アウトかもしれない。
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