蝶の王子様
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同族かと思ったが、その気配は無い。
そういえば、兵士が言っていた。
カエンの家に新参者がいると。
コウランに聞けば、親戚の子だと説明された。
クウラの方に興味を抱き、しゅるしゅるとサクラに巻き付く髪を緩める。
緩めるだけで、外しはしない。
直ぐ絞め殺せるように。
アヤキは口を開きかけたが、ユドンが遮った。
「お前、何してるんだ!?」
「ぐぇっ!」
言いながら、ユドンはクウラを地面に座らせ、無理矢理頭を下げさせる。
そして、自分も地面に額を擦り付ける勢いで、頭を下げた。
「すみませんアヤキ様!こいつ他の国から来たばかりで、何も知らなくて!」
「どうか、此処は見逃してくれ」と心の底から思いながらユドンは頼む。
土下座なんてしたくないが、今はしないとクウラとサクラの命が危ない。
下手したら、一族全員皆殺しだ。
自分達の行動で、平和に過ごす一族を壊すわけにはいかなかった。
「面白い小僧だのう、お前の親戚は。だがなユドン、お前がどんなに謝ろうと身代わりになろうと、私はこの娘とそこの小僧を許せんよ」
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