蝶の王子様

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 アヤキは不敵な笑みを浮かべながら、サクラから奪い取ったクナイを、彼女に見せる。
 ぎゅうぎゅうと髪に力を入れて、サクラを締め付けながら、口を開いた。

「いけないのう。子供がこの様な物を大人に向けて」

 縛られたままのサクラは、バタバタと足を動かし、手で髪を解こうとする。
 力を使えば刀を作れるのに、息が苦しくてそれどころではなかった。
 息がしたい、苦しい。楽になりたい。
 彼女の思っていることが、アヤキには手に取るように分かる。
 それでも、髪を解こうとしない。
 解くどころか、新たに髪が伸び、彼女の腕に絡みついた。

「そして、兵士達。ただの小娘に遅れを取るとは……」

 髪に縛られた兵士達にむけて、アヤキは左手を向ける。
 作り出された針が兵士に向けて放たれ、彼らの体に刺さり、髪の間から血が滴り落ちた。
 腕に絡みついた髪が動き、サクラの首から離される。
 終わりだと、誰もが思う。
 が、アヤキに向かって包丁が投げられた。
 包丁は、アヤキの頬スレスレを通り、地面に刺さる。
 髪を緩め、独裁女王は投げた人物を睨んだ。
 見たことのない少年がいた。
 黒い髪に、黒い瞳。
 もう、この国には無い色。
 自分と同じ色。

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