イケ学LongStory

□蜘蛛の糸 由紀
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初めて彼女を見たのは
前の学校から送られてきた書類に目を通した時


写真の彼女は真面目で大人しそう


それ位の印象しかなかった


成績優秀……


なのに何故
進学クラスではなく
うちの一芸クラスなんだ…


素行に問題でもあるのか?

写真の印象からはそんな雰囲気は一切感じられない



資料にも特にそれといった内容は書かれてはいなかった。




会ってみなきゃわかんねーな…


面倒を起こしてくれなきゃそれでいい……


それだけだった










実際に会ったのはそれから数日後


校長室へ入ると
校長や教頭に挨拶をしている彼女がいた


俺に気付いた校長が


「あぁ、冴島先生
この子が今回転校してきた
**さんだよ
**さん君の担任の冴島先生だ…」


お互いに紹介され
俺の方を向いた**


その瞬間ドキッとする


色素の薄い髪
透き通るような肌の白さ
大きな黒めがちの瞳
頬はほんのりピンクで
唇は熟れた果実のような色


子供の様な身長で
もの凄く細い
なのに
ボディラインだけは
やけに生々しい


印象的なのは
体からスラリと伸びた
細くて長い
しなやかな手足


綺麗だと思った
ただ単純に美しいと…




人に…
ましてや
こんな一回りも離れたガキに


一瞬でも心が奪われそうになるなんて


思ってもみなかった




「初めまして**です
今日からよろしくお願いします」


鈴の鳴るような声


挨拶をして下げた頭を上げ

微笑む**




俺はただ見惚れていた


「先生…?」


不安げな声を出し
俺の顔を覗き込む
**に気づき


ハッと我に返ると
取り繕うように挨拶をした



「あ…あぁ、冴島だ…
よろしく」


俺の言葉にホッとしたのか
表情を緩ませ



元気良く




はい!



と言った**の反応は
紛れもなく17歳の少女のものだ



それを見てどこか安心する自分がいた









彼女を教室へ連れて行く時


疑問に思っていた事を聞いた


「**、お前成績良いのに
進学クラスじゃなくていいのか?」



彼女はクスクス笑う



とても聞き心地の良い声だ




「いいのかも何も…
編入試験受けての結果ですよ?
前の学校レベルが低かったから…
だから実力です」


可笑しそうに笑う**


そんな訳ない


テストの結果は進学クラスでも上位に食い込む



やっぱり素行が……?


彼女を目の前にしても
そんな風には一切見えない…


ここで考えても意味がないか…


思い直して
曖昧に返事を返した



「しかし、
良くうちの学校を選んだな…
大丈夫か?」


今度は素直な疑問


共学になったとはいえ

初の女子だ……


さぞ不安だろうと思ったら



「大丈夫って何がです?」


まさか…


知らないのか?


「女子はお前しかいないんだ………」


え!?


驚く彼女


だが直ぐに持ち直し
笑顔になる



「大丈夫だと思います
順応性はある方なんです」



そう言って柔らかく微笑む姿は
少女というより
女のそれに近かった










「ここがお前の教室だ
うちのクラスはバカだらけで騒がしいかもしれねぇが…
まぁ、我慢してくれ」


何で気を遣う?
いつもの俺になれない


彼女はフワッと微笑み
首を縦に振る


あがってるのか?
俺が?
こんなガキに………?


んなわけない…


頭に浮かんだ考えを
掻き消すように
大きく咳払いをして
教室のドアを開けた



ガヤガヤといつもの煩さ



でも
俺の後ろに着いて来た
**の姿に
教室の騒がしさは
一瞬で静かになる


男なら誰もが振り向くだろう


少女のあどけなさと
女の色気


この二つが同居している
彼女の不思議な魅力に
心を奪われる




クラス中が息を飲む音が聞こえたようだった



静まり返った教室に響く俺の声



「**、自己紹介しろ」



彼女はそっと頷き
一歩前へ進む



「皆さん初めまして
**と言います
今日からこのクラスの一員になります
女子が一人という事で
不安もありますが
どうぞよろしくお願いします」


良く通る声で
軽やかに喋り終わると


俺に微笑み
クラスを見回して
更に微笑みを投げ掛ける



大人しそうな外見からは
想像つかない程
堂々とした挨拶


女一人だという事に臆さない
彼女の凛とした後姿に
俺の中の何かが
崩れた様な…動き出した様な…
妙な緊張感が生まれ




それと同時に
この一瞬でクラス中が**に夢中になったんだ



この時に気付くべきだった




彼女の魔性に………


俺も…
こいつらも……
彼女の魅力に絡めとられて
藻掻く事になる………
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