SP ShortStory

□ただ、君に出会うために 一柳 昴
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「……ぁぁん…」



俺の肩に爪をたて
わざとらしく身悶える女



巻いた髪を振り乱し
一心に俺を求めて
自ら腰を振り続け



声をあげ、自分の姿を
見せ付けるように
薄目を開けて俺を見下ろし




「ぁぁん…すばる……」




紅潮した顔

汗ばむ肌

交わる吐息

繋がる快感……












最近は
任務が終わると
無性に女を抱きたくなる







疲れ果てた躯が
要求する欲



躯が熱に飲み込まれる




体の関係だけの女
それ以上も以下もない



それが楽だ




俺が逢いたい時に逢う


呼び付けてすぐ来れる女が理想だ



俺の事を訊かず
自分の事も話さず…



それでいい


それだけでいい







体勢を替え
女を下に


足を持ち上げ
乱暴に貫く




一層激しく鳴き喚く女の中は、限界が近いのかヒクついて俺を締め付ける




高い声で鳴いた後



弓なりに反る躯から漏れる、震える吐息




俺は熱を女の躯に撒き散らす








ベットに二人横たわると
自分の胸を押しつけるようにして、その女は俺の腕に絡み付く




甘えたように笑い
自分の居場所とでも言うようにして、指を絡めていく



「…………好き」



あぁ、こいつもか…




何故、どいつもこいつも錯覚する?




俺達は体だけだろう?

それで納得していた筈だろう?

体の繋がりがすぐ愛情だと錯覚する…

だから女は面倒なんだ…



それ以上も以下も
俺は求めていない




「……ねぇ、好き?」




「…………あぁ」




こいつは結構気に入っていた方だ




煩く言わず


来いと言えば
一時間以内に駆けつけ


何も訊かなかったのに………




もうダメだな…




「次はいつ会える…?」




「次の任務が終われば…」




もう逢う事は無い



これで終わりだ










女が眠ると
金を残してホテルを出た






どれだけ女を抱いても
潤う事のない心
満たされる事の無い気持ち



真夜中、車を走らせ



女は面倒だと思う反面


女の柔肌を激しく求める自分



そんな風に思う自分に焦燥感が付き纏う









───────




数日後





「………総理に娘?」




「あぁ、最近ようやく見つかったんだ」




総理は今、多方面からの圧力、そして脅迫等が続いてる



「これが総理のお嬢さんの写真だ」



見るからに普通の女
特に感想を持てるような奴ではなかった







「え!?こいつ……」




海司の素っ頓狂な声




「結構かわいいじゃん♪」



そらはいつもの事か




「キャサリンみたい…」



瑞貴の意味不明な言葉…




「……で、この娘も狙われるって事ですか?」




「そうだ…組織の方は公安で調査中だが、このお嬢さんの存在は犯人達にばれていると見て間違いない」




「その前に娘をとっ捕まえればいい訳ですね」




班長が大きく頷く




「今日は、渋谷方面に出掛けるらしい
犯人達が接触する前にマルタイを保護する」




「了解」






次々に部屋を出ていく面々。



最後に続いた俺の足下に
ヒラリと落ちた紙切れ



拾い上げると
さっき見た娘の写真だった



「…………普通のガキ…だよな…」


呟いて



写真をデスクに乗せ現場に向かう














俺の渇いた心に──



潤いが満ちていくのは
もう少し先の話……



〜fin〜




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