C l a p 2

□アイドル!
1ページ/2ページ





アイドル!




俺が幼馴染みだった鎖介とよりを戻して、もう半年が経った。
現役アイドルで芸能人の俺と、マネージャーの鎖介。
大好きな人と何時も一緒に居られて、幸せな毎日を送っていた、そんなある日の事だった。

俺は初の恋愛ドラマの主人公を任されて、今日も撮影に明け暮れていた。
ドラマは脇役で何回か出た事あるけど、今度は主人公…台詞も沢山あるし、演技力も必要で、台本を片手にハードスケジュールを送る毎日。
仕事は楽しいけど、でも…
幾ら何でも、ラブシーンは抵抗してしまう。


「成斗君、もう少し積極的な感じで!」

「あ、ハイ!!」

「じゃあシーン22の彼女の手を取る所から、もう一度!」


今日録っているのは、主人公が幼馴染みの女の子を、無理矢理その子の彼氏から突き放すと言うモノで、要するに「嫉妬する主人公」って感じ。
そんな事した事もないし、と言うか…マネージャーの鎖介の視線がさっきから怖い!!
鎖介を横目に見ながら、俺は気合いを入れ直した。


「優奈、お前今日バイトだろ?何やってんだよ。」

「ち、ちょっと陽太!今渡瀬君と話してるんだから邪魔しないでよ!!」


幼馴染み役の若手女優の桜ちゃんを引っ張って、教室のセットから出て振り向く。
此所が一番苦手な所だ。


「お前…渡瀬渡瀬って……そんなにアイツが良いのかよ?」

「別に、陽太には関係ないじゃない。大体陽太こそ…由希が居るんでしょ?私の事なんか放っといて―――…」

「俺が好きなのは、アイツじゃなくて鎖介だ―――…Σあっ、ヤベ…!間違えた……。///ι」


ついうっかり鎖介の名前を出してしまって、またカットが入る。
桜ちゃんは、手を放して溜息を吐いた。


「もう成斗!鎖介って名前何所から出て来るのよ?って言うか、アンタのマネージャーの名前よね、それ?」

「ごめん、ごめんなさい!名前飛んだんだってば…。///ι」


恥ずかし過ぎる。
まさか鎖介の名前を出すなんて。
監督は撮り直しの合図をカメラマンに送って居た。
確かに俺の好きな人は鎖介だけど、役割の陽太は幼馴染みの優奈が好きなんだ。
それから俺は、もう一度同じシーンを撮り直して、今日のドラマ撮影を上がった。


「あーもう本当恥ずかしいってば…。」

「でも堂々と俺が好きだって言えるくらい、俺の事好きなんだろ?」

「な、ば…莫迦!何言ってるんだってばょこんな所で!!///#」


事務所の廊下で普通に言った鎖介の口を、慌てて塞ぐ。
もし誰かに聞かれたら、また報道沙汰になる。
この前は、鎖介と手を繋いでデートしてた時の写真撮られてたし…。
何とか誤魔化せたけど、心臓に悪い。


「鎖介、俺、鎖介の事本当に想ってるから、もう放れたくないんだってばょ。だから、鎖介も自覚して行動を慎んで、ね?お願いだってばょ。///」

「分かってる…。」


そう言いながら鎖介は俺の肩に腕を回すと、立ち止まって軽く触れるだけのキスをした。
衝撃と驚きの余り、手に持っていた荷物を落とす。


「でも、欲望に忠実だろ俺ってさ?」

「な、な…なんっ!?///ι」

「今度から気を付ける……と、もうそろそろ次の収録の時間だな。」


腕時計とスケジュール帳を見ながら、廊下を先に歩いて行く鎖介に、俺は「莫迦!」と叫んで落ちた荷物を拾った。
好きでいるのも、愛して貰えるのも、本当は凄く嬉しい。
だけど、本気で次に報道された時の言い訳を早く考えた方が良いと
鎖介の背中を見ながら思った。




―end――…





 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ