気象2
□折れる折れないポッキーゲーム
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何が何だか分からない内にいいように連れてこられた名前も知らない奴の部屋。
別に名前くらい分かるけど、分かりたくもない。
「まさか…コスプレ好きなんて思ってもみなかった。」
vsの時、実は喜んで着てたのか…。
何のことだよそれ。何のことかわからないけど、項垂れるほどのことではだったのだろうか。
こいつが俺を連れてきた理由とか、色々分からないことだらけだが、1つだけ分かった事がある。
「何か勘違いしてねーか?」
「何を?」
「俺は二宮和也だけど、あんたの二宮和也じゃねぇよ。」
「…は?お前本当に大丈夫?」
きょとんとされても…。どうやったら信じて貰えるんだろう。怖い顔も通用しなかったし。
「悪魔。」
「…もう、勘弁してよ。」
「あ?」
「こないだは宇宙人、今度は悪魔。お前これで世界中に居るそっくりさん3人コンプしちまったじゃんかよ。」
悪い事まだしてないのに。普通にしてるだけでこんなに人間を不幸に出来るなんて。流石、俺。
いやいや、違う。不幸になっているのはこいつじゃなくて、面倒な事に巻き込まれてる俺だ。
そもそも隠居した先代の魔王が悪い。
新しい悪魔を産み出す度に顔が面倒だの名前が面倒だって人間からとってきて使ってんだから。
意匠登録ってやつがないからいいんだろうけど。
「あ、じゃあ人違いしちゃってるのか。ごめん。」
「それだけ?」
「…悪いけど、もう一つ。その格好で出歩かないで。一応アイドルだから。」
そう言って聞かされた驚愕の事実。人間の世界に居る俺はライトを浴びるアイドルらしい。
ありえねぇな。やってらんない。
「デビルニノ、か。」
「ん?」
「デビルのニノだから…略してデビニノ?よろしくね。」
何故だか急に優しそうになったこの人に、何か裏があるんだろうなって思って、騙し合いで負けることはないだろうが、なんとなくこの人苦手かもしれないと思った。
後にそんなものは無かったと分かるんだけど、それはまた後の話だ。
「普通の格好出来ないの?」
「無理。」
「困ったなぁ。ニノがこんな変人だって思われたら俺達も困るし…」
「外出なんてしねーよ。」
誰が好き好んで人間の居るところに行くかってんだ。
「そう。じゃあここにいなよ。俺ベッド使わないし。」
「は?」
反論する余地もなく、勝手に寝室に押し込まれた。
こんな人間初めてだ。
悪魔と一緒に居るってのに平気で寝てるし。普通の反応って、怖がる…よな?
このままじゃ威厳も何もかもが崩壊していく。問題山積み。
ソファで寝こけている変な人間を眺めながら、本気で身の振り様を考えた方がいいかもしれないと思った。