気象2
□Mの嵐 「径」
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「ねぇ、これ外してよ。」
「いいえ外しません。」
貞操帯よろしくつけられたこれらは自力では、いや、他人の力を借りても外せない。
バイブでもないし、なんていうんだろう、とりあえず貞操を守ることは保証してくれている。
唯一外せるのはこの人だけ。
「仕事の後で」と彼が出て行ったのが22時。
今日は夜仕事か、不規則なんだから。
先にシャワーを浴びてしまえばすることがなくなる。
台本をチェックしていたらいつの間にかシャワーを終えた径が居て、気付けば2時間が経過していた。
「おかえり。」
「ただいま。」
径と距離が近づく。
「今日の仕事は?」
「終わりました。」
仕事の早いことで。
「なので今から貴方の相手をします。」
俺の扱いってなんだろうと思うとめげそうになるから言わない。
錠の外れる音がして、身体や心がざわざわしてきた。
「今日も一日、防犯御苦労」とでも言いたげにソレらを脇に置く。
俺の体は二の次だ。
「ではお待たせしました。」
「んっ…く…」
後ろからも、前からも挿入されていた異物が抜かれて解放感はあるのに、精神的にまだ押さえつけられたままのよう。
「達してしまっても構いませんどうぞお好きに。」
「んなこと…」
言われたって…。
こういうの、羞恥プレイって言うんだよ。
って、理解してもらえる日は来ないだろう。
感性が凡人と違う。
というか、色々ぶっ飛んでいるのか天然Sなのか、考えた結果、多分情緒ってやつが欠如してるんだろう。
でないと俺がただのMで変態ということになる。
「別に貴方の自由なので構いませんが明日ここを出る前に一度出しておかないと辛いと思います。」
誰のせいだと思ってんだよ、クソ。
「特に尿道は…」
「径…」
「なんですか。」
「……。」
「用が無いのなら僕は寝ますおやすみなさい。」
普通、こういう時って、「よく我慢できました」的にあっちから来てくれるもんじゃねーのかと思う。
彼に一般的な(前提として過剰な我慢があることが一般的とは言わないが)センスを求めてはいないがもどかしい。
そして腹が立つ。
しかも抽象的に誘っても駄目と来た。
いつも勝てない、と思う。
彼は勝負している気など更々ないのだから当然ではあるのだが。
暖簾に腕押しとか、糠に釘とか、径に俺とか。
「あの…」
「なんですか貴方は明日も早いんでしょう。」
「……しよ?」