参画物部屋

□Several O
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凸凹ベストパートナーベターパートナーズ凸凹 続き





呼ばれて、とか、誘われて、こんなに簡単にOKするのはさとこくらいだ。
他人の誘いを断るのは楽だったはずなのに、領への当て付けか、さとこの魅力か、よく食事をする。
食事をするというのも幅広いから軽く説明しておこう。
パフェとかケーキとかお茶したい、と何が目的なのか分からないが連れて行かれたり。
カレーを作るから来い、と言われて行ったり。
コーヒーが飲みたくなったから淹れてくれ、そしてついでに何か作れ、と来たり。
これだけ言うとプライベートで仲が良いみたいだがそうではない。
きちんと仕事の時間内で行われ、きちんと経費から出ている。
そういった細かい事は出来るのだから驚きだ。
鴻野辺りには「最近仲が良いがもしや…」なんて言われたこともあるがスッパリさっぱり仕事の付き合いばかりだ。残念ながら。
いや、残念ながら、と表現するのが正しいのか。幸運にも、と表現するのが正しいのかは判断に迷うところだ。
さとこがサラダのトマトをフォークで刺して口へ運ぶ。

「今度、服見に行くの。ついてきてよ。」

「そんな仕事まで始めたんですか?」

「榎本さんセンスいいからねー。」

…聞いていない。いつものことだからもう構わない。もう慣れた。
適応力が高くて良かった。

次の日。
ギャルだから、そういうゴテゴテした店に行くのかと思い、若めのスタイルで待ち合わせ場所に向かった。
そこにいたさとこは珍しく軽装だ。これから思い切り試着するからか?

「今日はよろしく。」

「構いませんよ。」

「榎本さん、身長は?」

「165〜6。」

「体重は?」

「大体50くらいです。……なぜ?」

「いいからいいから。」

まさか…。

「領に?」

「えー、さあね。」

どうも胡散臭い。
連れられて来たのは結構まともな男ものの服屋。
てっきりさとこの物を買いに行くのだと思っていたが贈り物のようだし。
どうも体格が調度良いからと言うからには似た感じに違いないし。
似ていると言えばあいつしかいないだろう。…まあいいか。
手当たりしだいシャツだの何だのとあててくるさとこだが、どうもまとまらない。

「流石にその色はないと思いますよ。」

「あー、この紫にこの緑じゃ目が疲れるねー。」

絶対似合わない。
でも敢えて紫の水玉に緑の花柄を合わせてバッチリだとか言ったらそれをあいつが着るのか。
見てみたい気もするが、代理の試着でもそんな格好はしたくない。

「マネキン人形よりは役に立つつもりです。例えばあちらに飾ってある中ではどのイメージですか。」

「あ、そっか!そうだよ。榎本さんはセンスがいいんだった。」

それは知らない。
さとこが勝手に言っている事だが、助言させるために連れてきたのではないのだから忘れていて当然。
かなり最初の方から気付いてはいたが、さとこにとってはただのジャストサイズのマネキンだ。

「結構キレイめがいい。」

「なるほど。色遣いなんかは?」

「ごてごてしてなくて、シンプルで、でもムカつくスタイルは嫌だよね。ナルシスティックなのはいただけない。」

「聞いていますか。」

「うんうん。いいと思う。…っていうか、もう決めちゃってよ。」

「……わかりました。」

テーマを決めて、1つずつ考えて組み立てていくとなんとなく上手く収まった。
というか、さとこが関わるのをやめたらすぐに決まった。
その間もこの人はいつも通りで、色々と安心した。
買い物に付き合わされて1つ良かったことは、さとこにも、きちんと支払いという行為が出来ることが判明した事だ。
クレジットで支払って、意外と綺麗な字でサインをしていた。
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