参画物部屋
□大宮詰め合わせ2
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味だけレモン
敵の攻撃を受けた。と言っていた。
ツノも牙もずっと臨戦態勢。もうじき羽根まで出てくるんじゃないかって感じだ。
目は、そこからビーム出たりして…って思ってしまうくらい血走ってる。
そんな状態でバタバタ暴れてたから、押さえつけるのにちょっと苦労したけどとりあえず今は少し大人しくなった。
何かイライラしてて、癇癪起こしそう、噴火寸前、触るな危険。
「何食べたの?」
「メロン。酸っぱかった。」
「……それほんとにメロン?」
「メロン。丸い感じで…とにかく、丸っこかったからメロンだ。」
手で作ったその形も大きさも、もっと言うなら味の感想も、どう考えてもレモンだと思うんだけど。
何で食べようと思ったんだろう。レモンなんて普通は見た目にも匂いにも酸っぱくて食べないと思うんだけどな。
こいつはそれが原因だなんて微塵も思っていないんだろう。
攻撃を受けて口の中が痛い、と言っていたから捕まえて口を開いた。
見ると、少し荒れていて、ポッキーばっかりで栄養が偏っているからか口内炎が出来ていた。
酸っぱいモン食べたから染みたのか。
「ちゃんと飯食わねーからだ。」
「食べてる。」
「食ってねーよ。お前昨日も刺身食わなかっただろ。」
「あんな野蛮な事出来るかよ。」
野蛮っていうか、野蛮か?他人を攻撃したりしない、とは言っていたけど。
涙目でポッキーを睨んでいる。ポッキーなら食べても染みないだろうが、教えてやらない。
食べ物恐怖症の悪魔かあ。面白いなあ。
「その口じゃあ、キスも出来ねぇな。」
「!?」
パタン、とポッキーの箱の落ちる音がした。どうやって滑り落ちたのか、丁寧に中身だけはちゃんと持っている。
箱の中身の安否はともかく、出していた分は無事だ。
つーか、なんでこの世の終りみたいな顔してんだ?たかがキス、されど…いや、待てよ。
3度の飯よりポッキーで、3度のポッキーよりキスか。こいつにとっちゃ。
うわあ、めっちゃ面白い。しっぽが垂れて、不安そうに瞳が揺れてる。
不治の病じゃないのだが、こいつはそれを知らない。
目の錯覚か分からないけど、背後にどんより黒いもやがかかって見える。そこまで落ち込むことか?
項垂れて、顔上げたと思ったら、泣きそうになってた。…なんか可愛いな。
「自慢だったのに…。」
「ん?」
「めちゃめちゃ巧かったんだ。同じ種族でも俺が1番巧い筈なんだ。魔王さまだって大好きだった。俺以上に出来る奴なんて、今まで1人しか会ったことがないくらい、しかもその1人だって悪魔じゃないからカウントに入れないとして、そしたら1番だったのに。だから、自慢だったんだ。」
「…あ、そう。」
そんなに自慢だったのか。殆ど問題がないとも知らないで可哀想に。
「大野智、なんとかしろ。なんとか…メロンから受けた傷を治す方法はないのか?収容か?」
「収容?」
「…人間の世界で言う入院?死にかけた奴とかは収容して回復させてる。」
「お前達って戦わないんじゃなかったの?」
「基本的には。」
こいつらは一体どういう生活をしているんだろう。
まあいいか。
「ビタミン摂って、薬でも塗っとけば?治ったら俺とする?」
「何を?」
「自慢の。」
「…自慢のフェラチオ。分かった。治してくれたら一晩中だってやってやる。大野智が2日間くらい寝込みたくなるくらい吸いつくしてやる。」
あ、そっちですか。
これって、喜んでいいのかいけないのか微妙だな。
次の日、究極だるい体で出掛ける羽目になったのは言うまでもない。
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口内炎と戦うデビルを見て面白がるo
20131023