参画物部屋

□大宮詰め合わせ2
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「浮遊するセンサー」(on)










物欲がない、とニノはよく言うけど、物欲どころか欲がない。欲しいのは平穏。
何も要らない、そして何も失くしたくない。静かに、変わらぬ平穏をこっそり願う。
何も要らないと言いながら、なのに何も持っていないと言って寂しそうに泣くんだ。
何も持っていない状態を自分で作っていることに気付いているのか居ないのか。
誰かが側に居て、その時嬉しそうにしているのに、和んでいるのに、気付いているのか居ないのか。
多分、気付いてないんだろうな。自覚なし。
気分が落ちてる時なんて、本当ダメ。
起きても着替えないし。食べても洗い物しないし。座ったら、後は1日中暗くなるまでその場から動かない。
それがニノのオフで良くある光景。



合鍵使って部屋に入ると、パジャマのまま、洗い物置きっぱなしで、ゲームしてた。
とりあえず着てるのはそのままほっとくことにして、洗い物、掃除をした。
今は無理に話しかけてもダメって知ったのはいつだったか。
しつこく話しかければ返事するけど、ムリさせたらダメ。
片付けることを全部終わらせてから、湯を沸かして、コーヒー淹れてカップに注いで持って行って。
そのころになってやっとニノの心の準備なり、ひと段落がつくらしいのは最近分かった。
テーブルにカップを置くと「俺駄目だね。申し訳ないね。」みたいな顔して顔を上げる。
だからいつも

「いいんだよ、ダメにならなくても。」

って言ってやる。
だって悲しいじゃん。
ダメにならなきゃ自分を保てないなんて。
周りに見せる自分の姿と、周りに見せない今の自分の姿の評価を平均して、それが多分彼による彼の自己評価。
普段が頑張り過ぎなんだよ。だからバランス取れなくて、わざわざここまでダメにならなきゃならない、らしい。

そうして、もう少し横に居れば、ちらっと一瞬だけこっちを見てコーヒーを飲んだ。
あと少し。
カップを置いたニノを抱き寄せたら、少し、初めだけ強張らせるけどやがてその力も抜ける。

今日も、いつもと同じ。
ほら、泣いてる。

「俺、独りなんだ…。独り…何も、ない。」

「本当に、1人?俺は?」

「…リーダー。」

「そうそう。それで今は何を掴んでるの?」

「リーダー。」

「お腹空いた?何がほしいものある?」

顔を上げて、首を横に振る。
目が合って、やっと、今ここに居るのが1人じゃないって分かった?
マイペースなのにね。他人に合わせようとするんだから。
沢山の事がごちゃごちゃになって、また分からなくなるかもしれないけど、大丈夫。その時はまた俺が教えてあげる。
暫く落ちてる状態で居て、ふっと切り替えたみたいにこっちに浮上してくる。

「着替えなきゃね。」

「いいよ。出掛けないだろ。」

「…そっか、じゃあいいか。」

そう言って、やっぱり申し訳なさそうに笑った。
こうやって自分には素直にダメになれるのに、外ではダメにならないし、意地っ張りだから「助けて」が言えない。
いつでも支えたいのに、頼ってくれたらいいのに。
両腕でしっかり抱きしめてもう一度ぎゅっと力を込めた。
泣くかと思ったけど、もう泣かなかった。
俺に出来るのはニノが今に戻れるよう場所を整えてあげるだけだ。










「大宮ぁ、またひっついてるんだからー。ここ楽屋ですらないよ?」

「ふふ、いいでしょ。大宮なんだから。」

せめて、その場所が、時間が、少しでも長くあるようにと。










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欲しがらないn、与えたいo/大人なo
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