参画物部屋

□彼と俺とあいつとそいつ
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彼と俺と熊田とそいつ










有明功一は詐欺師。成瀬も悪い奴だが有明も悪い奴だ。そう思っていた。

「有明は成瀬の何なの?」

実は、悪い奴同士、共犯者か何かなんじゃないかと踏んでいる。
悪人と悪人が一緒に居る理由なんて、それ以外考えられないからだ。

「俺は成瀬に…」

「美味しい食事を提供し続けるシェフです。」

「なんか俺と扱いが大分違うような…。」

「いつまで専属シェフなんですか。貴方が作ればいいじゃないですか。レシピは教えたでしょう。」

このレシピって単語1つ取ってもそうだ。絶対に悪事に関する方法か何かだと思うだろう。
1年2ヵ月3週4日前、成瀬が有明を連れてきて、それから一緒に住んでいる。
半年ほどは有明は大人しくしていたが、その後実家と別に新しく店を出した。
だから、出ていくものだと思っていた。それなのにやはり帰って来る。
そしてどうも2人にしか分からない会話をこそこそキッチンでしている。
「これは黒だろう。絶対に黒だ。こいつらは真っ黒だ。」聞こえる小さな呟きを、成瀬と有明は聞き流した。



朝、誰よりも早く成瀬が起きるから、と負けないように起きようとする。
だけど勝てた試しは一度もない。
起きていくと、いい匂いがして、新聞を読んでいる成瀬と朝食を作っている有明がいる。

「おはようございます。」

「うん。おはよう。」

「おはよう。もうすぐ出来るから待ってて。」

「うん。」

顔を洗って戻って来ると、ジャストのタイミングでテーブルの上に朝食が並ぶ。
今日は林さんライスではないな。と安心する。

朝食を終えるとコーヒーを飲んで、成瀬が出掛ける。
その後すぐに有明も出て行くから、暇になる。
つまらなくなって、でも行きたい所もなくて、昼食も食べなければいけないから有明の店に行く。
すると成瀬が来る。昼食を摂ってコーヒーを飲むと仕事へ戻る。
そしてやはり物足りない。
家に帰ると、先に帰って来るのは成瀬だが、余程の事がない限り、夕飯は有明が帰って来てから。

「なんか、何故だか理由は分からないがむかつく。ムカつくってのは所詮訳わかんない感情だ。」

声に出してみた所で、分からない感情だからと納得して収められるものでもない。
理解できればもっと細かく何がどうなっているから腹が立つ、など逐一説明ができそうだ。
嫉妬、ヤキモチ、そういった類か。

「ただいま。遅くなりました。夕飯は…まだですか。すぐ作りますね。」

「助かります。」

「いえ。間食はしました?」

「スコーン2つ。」

「ずるい。知らない内におやつを食べていたなんて。」

「熊田さんは?」

「スコーンとメロンパンとシフォンケーキ。」

「じゃあ、炭水化物は控えますね。」

「流石。」

「いや、朝も昼も食べたもの分かってますから。」

なんか、専属シェフと言うより、専属の栄養士のような奴だと思った。
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