気象2

□お触り厳禁です
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「うわっ、何だこれ!」

もう寝よう。事件が起きたのはそう思って寝室へ向かった時だった。
勿論部屋着を取りに行く為であってベッドに潜りこむ為ではない。
だけど開けるとそこには山。
山、山、山、山脈!ポッキーの。
そして聞こえた気だるそうな声。

「んー…、うるせぇな。」

こないだ魔界へ帰った筈のカズがなぜ。しかもポッキー付きで、だ。
まさかの返品か?

「お前、なんだ…夫婦喧嘩でもしたのか?」

「ち、ちげぇよ!しねぇよそんなの。」

「そりゃ、まぁ…どーでもいいや。それよりそこのタンスの前のどけて。」

「大野智。悪魔に頼み事するのがどういう意味なのか分かってんだろうな。」

やはり変わっていないめんどくささに笑いをこらえるのが大変だ。
可愛いのだけど、めんどくさい。

「知ってる知ってる。ポッキーだろ?ここだけ道開けてよ。」

「うっ…よく分かってんじゃねぇか。」

「そういえばお前さ、いっつも普通のポッキーばっかだけど。他の味は嫌いなの?」

「他の…?あ、他の味のも俺のだ。」

今、普通に知らなかっただけなんだろうな。
窓の外に神様が見えた、って事は…きっとまた自力で解けない呪いかけちゃったんだろう。
学習しろよ、と思うも久しぶりのこの面白い時間は嬉しい。










家に帰ると当たり前のようにラグマットに座り込んでいるカズ。
猫でいうところの炬燵だな。
ホットカーペットが敷いてあるから暖かいんだろう。
猫と違うのは昼寝しているのではなくひたすらDVDを観ていることだ。
動くものを目で追っている、と言えば同じようなものかもしれないが。
山場を迎え、食い入るように画面を眺める彼を横目に家の事を片付ける。
適当に掃除して、適当に夕飯の支度して。
洗濯物を取り込んで、傍を通りかかった時。何かを踏んづけた。

「ふぎゃぁっ!!」

「!?」

突如上がる声にこちらが驚く。

「あっ…な、なに、すんだよ。」

痺れたてしまったみたいに、カズが倒れている。

「えっと…ごめん。」

謝ってみたが、聞いているのだろうが応答はない。
いつもならポッキーがどうのと言いがかりをつける絶好のチャンスなのに。
ひょっとすると、悪魔にとって弱点の様なもので、ここを攻撃されたら体力が一気に減ってしまう、とかそういうところだったのだろうか。
あまりに静かだから本当に大丈夫かと心配になり、洗濯物を脇に積んだ。
近付いて、踏んだと思われる尻尾を手に取ったらびくっと反応したからさっきと同じくらい驚いた。

「さっ…触んなっ!」

「え、でも…。」

思い切り踏んづけたし。悪い事をした。
逃げようとしたので咄嗟にそれを掴むと

「ひゃぁっ!!」

とまたも声を上げた。
うつ伏せだけど耳がほんのり赤く染まっていて、少し震えている。
息づかいも何だか細かくて苦しそうだ。
これってもしかして、感じてるの?感じてるんだよね?
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