気象2
□折れる折れないポッキーゲーム
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魔界を追い出された。…正式にはお遣いなんだけど…。
だからさっさと終わらせて帰ればいいだけの話なんだけど。
一体何様のつもりなんだか、この俺様を遣おうだなんて。いい御身分だぜ。
どーせ、魔王様のきまぐれだろ?めんどくせぇ。誰か別の奴に行かせればいいものを族長の野郎。
めちゃくちゃ遊んでから帰ろう。
そう思って人の姿になったのに、今度は神様め。なにが「分け合え」だ。これ以上誰かの言いなりなんてごめんだね。
ポッキー。くそ、味と食感と匂い以外ムカつく。ふざけた名前しやがって。
おまけにガキどもにたかられるし、散々だ。…もう、ホントはそろそろ帰りたい。
「けど用事がなぁ…」
迷惑な話だぜ。
「どうしたの?」
ほら、来たよ。これはハロウィンなんかじゃない。
本当の姿なんだ。
こんなカッコで出歩いてるから声もかけられる。無視無視。
ポッキーを齧りながらまだまだ残っているポッキーの事を思い浮かべて、分けた方が早く楽になれるのは分かってるんだけどなぁ、なんて考えながら歩いていた。
しかしそいつがしつこく追いかけてきて肩を掴んだ。
「お、ま…」
「ちょっと来い。…なんて格好で歩いてんだ。」
そのまま彼はタクシーに、あろうことか俺様を押し込めて勝手に行き先を告げた。
「降りる。」
「駄目。」
「離せ。」
「駄目。」
指図する奴は嫌いだ。ちょっと驚かしてやろうか。
だけどなぁ、ガキに笑われたトラウマが…。いやいや、あいつらは物事を分かっていないからツクリモノか何かだと思ったに違いない。
本物の悪魔に会ったら怖い筈なんだ。よし、まずはこのタクシーごと…
「すみません、ここで停めて下さい。」
「はいよ。」
しかし顔を造るタイミングでタクシーが停まった。
「……。」
完全にタイミングを逃した。何なんだこいつら。馬鹿にしてんじゃねぇ!
仕方ない、タクシーは見逃してやろう。だけどこっちの人間はただじゃおかねぇ。
振り返ったら悪魔が居たらびびる筈。
悪魔の顔見てびびったらいいん…だ…。
……あれ?
なんで、反応が無いの?
ははぁん、なるほど。びびりすぎて反応出来ないってやつだな。俺様に指図するからだ。
「よーく分かったか。」
「分かるかよ、馬鹿。それ子どもに笑われてたやつじゃん。」
「馬鹿だと!?」
つか、見てたのかよ。うわ、恥ずかしい。ムカつく。
「もう、恥ずかしいからいい加減にして。」
絶対許さない。
「お前一体何様のつもりだ!」
「いい加減、怒るよ。」
ため息をつく男に、俺の怒りは高まるばかり。怒りたいのはこっちだ。
「いいか、お前なんか…」
「お前って言うな。」
お前の名前なんて知らねーよ。