気象2

□活字化されない情報の代償
1ページ/3ページ

朝刊分の情報




「翔くん。」

座ったままおいでおいでってしている智くん。
早く来て良かった。にこにこ笑っている彼を見て、それだけでほっこりする。
隣に座っているだけで、なんて落ち着くんだろう。
きっと膝枕だろうから荷物を置いて、

「どうぞ。」

と膝を提供した。
しかし珍しくそうではなかったらしく、単に抱きしめられただけでちょっと驚いた。
あれぇ、何かあったかなぁ。
ここのところ公私ともに一緒に居る時間は多かったのに。
なんて考えていたらそのままゆっくり倒されて、なんで俺が膝枕されてるんだろう?
見上げた彼の表情はまだこれから仕事が始まるってのに既に労わるような顔をしていた。

「寝てていいよ。起こすから。」

それ、いつもの俺のセリフじゃないか。
どうしようか考えていたら、それを遮るようにバサッと新聞を被せられた。
まだ全部読んでないのに。
まぁ、いっか。
それにしても、なんて落ち着くんだろう。
すぐにうとうとしてきて、すぐさま寝入ってしまったらしい。





「翔くん。」

「んー、何…。ちょっとだけ待って。」

俺の寝起きは普通だが、寝起きの顔はとてもじゃないがお見せ出来るようなものではない。
だからちょっと待ってと言ったのに。
そんな俺の配慮を知ってか知らずか被せた時同様、勢いよく捲られた。

「おはよ。」

「…おはよう。」

やっぱり優しい表情だけど、少しおかしそうに笑ってるの、気付いてるんだからね。
人の顔見て失礼な。

「もうじき時間だって。」

「ん。」

「何拗ねてんの?」

「別に。」

拗ねては無いけど。ほんのちょっとだけ怒ってる…かもしれない。
どっちだろう、怒っていないかもしれない。
今日の朝刊を読めなかった事と寝起きの顔を笑われた事があって、それでもこの場所が心地よすぎて怒りなんて感じられない。

「何で新聞被せたの?」

「暗くないと寝れないって言ってなかった?」

言ったような、気もするし。言ってないような、気もする。
1人でいざ就寝しようって時、普通は明かりは消すだろう。

「それならアイマスクあったのに。」

「……ふふっ、よだれ垂らして寝てたらどうすんだよ。」

「俺そんな酷くない、よね?」

「さぁ、どうかな。」

え?えっ??俺って寝てる時も見せられないような顔なの?
コントロール可能の範疇から外れているとはいえ、本当ならショックだ。
愛しい人に見せてる顔が起きている時以外全て不細工だなんて。

「どうなの?」

「さあね。」

「そんな意味深な所で教えてくれないなんて…。」

抗議をしてみるも、それにも彼は穏やかに笑っただけだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ