企画物部屋
□甘さ隠し
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「俺、もうニノの事甘やかさない。」
溜め息半分、小さく呟いた。
しかしそう言っていた張本人は、並んで座ってベタベタベタベタ…。
というか、いちゃいちゃいちゃいちゃしている。
楽屋でも、前室でも、スタジオでも。もう、ずーっと!!
甘やかさないんじゃなかったの?って聞きたくなるくらい甘い。
「ニノの手、やっぱり可愛いなぁ。」
「もう、あと少ししたら休憩終わるんだから離してよ。」
「いいよ。」
「……どうしたの。やけに素直じゃん。」
「何拗ねてんだよ。仕方ない奴だな。」
再び手を握り合う大宮。
いや、だから…甘やかさないんじゃなかったの?
そんな心の疑問なんて聞こえている筈もなく、かくれんぼの為に2人は手を繋いで移動していった。
1/5の確率勝負だから勝てる確率は同じ。
ババ抜きじゃないから心理戦も使えない。だからただの運任せに近い。
それなのに、智くんが優勢に見えるのは何故だろう。
1回目、2回目と攻守を交代しての3回目。
「…あれ?」
さっきまでの開けそうな雰囲気が消えてしまった智くん。
「どうしたの?」
「いや…。」
結果は、3回表でニノが発見して、3回裏で智くんが外したからニノの勝ちなんだけど。
俺だけは騙されないぞ、みたいな思いがふつふつとわき上がって来る。
それを確かめる暇もなくカヌーで大変な目に遭ったりもして、ババ抜きして、結局聞けないままに収録が終わった。
「貴方さ、甘やかさないんじゃなかったの?」
「へ?」
まさか、朝言っていたのにもう忘れているんじゃなかろうか。
ありえなくもないが、いくらなんでも大事な大事なニノのことを忘れるだろうか。
「ニノのこと。」
補足すると、合点がいったようで「ああ。」と頷いた。
「甘やかしてないよ。」
どの口がそんな事を言うんだ。
確率を精神力でなんとか出来そうな人が、諦めていたじゃないか。
「じゃあなんで見付けなかったの。」
「ニノにも同じこと聞かれたわ。」
「なんでなの?」
「俺は見付けないから、お前が見付けろ。って言ってやった。」
「は?何のために。」
精神力で発見される確率を上げている智くんの様子を想像してみる。
彼なら出来なくも無さそうだから不思議だ。
「俺だって、たまには甘えたっていいだろ?」
それがどう繋がるんだろう。
「というか、甘えるニノは駄目だ。」
「貴方、また言ってんの?いいじゃん、俺だって甘えても。」
「駄目ったら駄目。」
戻って来たニノは、やっぱり、どう控え目に見たって智くんが甘やかしているいつものニノ。
話の途中だったのに、手を繋いで出て行ってしまった。
「翔ちゃん、深入りするのやめなよ。」
「野暮な事するから訳わかんなくなるんだよ。」
「だって…」