企画物部屋
□大宮の災難
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どっきりの内容は、リーダーから事前に聞いていた。
何も構えないで本番に臨むにはアレな内容だし、配慮してくれたのかな。
それとも撮影があったその日に「にの、にの…」って何度も何度も呼ばれて抱かれたから単に不快だったのか。
或いは両方か。
内容と、画的にどんな風になりそうかも心底嫌そうな顔をしながら話してくれて、それを彼の腕の中で黙って聞いていた。
「俺の時と似たようなもんか。ご愁傷様。」
「お前なぁ。ちょっとは嫌だとか思わないわけ?俺の背中、すっげぇ可哀想だったべ?」
「じゃああっち向いてよ。」
「ん。」
俺を抱きしめていた腕を抜いて、もぞもぞと向こうを向く。
肩に頬を寄せて、背中に抱きついた。
今、この時は、この人を護ってるみたいだと思った。
迎えた当日。
リーダーの言ってた通りの内容に、初めは何をどう言ってやろうかと考えながら目で追っていた。
だけど、途中からすごく気持ちが悪くなってきて、顔に出さないようにするので精いっぱいだった。
あー、絶対表情硬いだろうなって分かるくらい。冷や汗出そう。
奥歯を噛んでしまいそうになりながら、口の端だけ持ち上げて。
早く終わらないかとずっと待ってた。
「はい、2分CMです。」
「はぁーっ」
思わず詰めていた息がため息になって外へ出た。
「大丈夫か?」
「うん。気持ち悪いけど大丈夫。」
そりゃあんな目に遭ったら一晩中でも仕方ないかと思う。
俺だってあの日はずっと彼を離せなかった。
いつまでも満足できずに、ずっと。
「本当に大丈夫?」
「翔ちゃんまで何言ってんの。」
仕事でしょ?
大丈夫の内容を考えるも思い至る節は無い。
不快だとは思うけど、別に怒ることではないし。
頭では分かっていても嫌だと感じたのは事実。
だから、ちょっと独占欲を傷つけられただけだ。そう自分に言い聞かせた。