企画物部屋
□28歳のハローワーク
1ページ/7ページ
13歳の俺。
15歳の貴方。
19歳の俺は臆病なまま。
20歳を迎えたあの日の判断が正しかったと思っている。
リーダーの隣は俺の場所。
撮影の合間。
所定の位置、左隣りに座ったら彼が口を開いた。
「今年は30歳が2人だね。」
「貴方は32歳だし。早いねぇ。」
「来年も2人だな。」
「だね。」
何を今更。
順番に生まれたんだから、毎年同じように順番に年齢を重ねているではないか。
歳の差は広がったり縮まったりなんて奇妙な事はしない。
「俺達も徐々にミドルになって来てんだな。」
「ミドル…確かにな。でもお前、本当にずっと17歳だったら良かったのに。」
「はい?」
意味が分からない。
何が起こってその結論にたどり着いた。
途中経過を是非ともお聞かせ願いたい。
「若かった時さぁ…お前の事、押し倒そうと思ってた。」
「えっ…。ちょっと待って、それ、マジ話?」
ふふっ、と笑って肯定される。
わ、笑えない。
「今はそんな気ないから心配しなさんな。」
くしゃっと頭を撫でられるが、俺の顔が強張ったままフリーズしてんのは身の危険を感じたからではない。
押し倒しても良かったのにって思いと、何で今更って思いが混ざってた。
あの時、確かにこの人に惚れていた。
大人になって、ある時期から口説くような発言や思わせぶりな行動(この告白によってそれらは下心に因るものだと判明したのだが)そういったアタックは無くなっていった。
だからこそこっちから接近していってのこの位置に居られるのだが。
なのに、だけど何で今更。
どこで選択ミスをした。
「何で、今それを?」
「そろそろ時効かな、って。」
「未遂ですらないのに時効も何も…。」
「じゃあ、押し倒したいって思いながら話しても大丈夫だった?大丈夫じゃないだろ?時間が必要だったんだよ。じゃなきゃ今、お前とこうやっていられないしな。」
勿論彼の言う通り、アタックが消えたからこっちから仕掛けたのであって。
その時間は俺達の間に、どんだけベタベタ引っ付いてもじゃれても平気、って精神的距離を築き上げた。
それでこの人の懐に入ってる現状に満足している自分が居て。
なのに今更こんなカミングアウトをされて、少なからず動揺はしている。
俺は、どうしたかったんだ。