気象

□妥協する本心
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やってらんないよ。
って、誰もが思ってた。





狂ってないと。





「痛い」とは言わない。
そんな形容詞は使わないように自分で自分を調教した。
「嫌だ」というの形容動詞も「嫌」って名詞も使わない。
基本的に、否定の意味を持つ言葉は言わないようにした。

「あっ!…ねぇ、後で…」

「嫌だ、面倒臭ぇ。」

メンバーは誰ひとり止めやしない。
前はまぁ、びっくりしたんだろうね。
一応止めたこともある。



これ以上の激しさはないんじゃないかって程、発祥地フランスも真っ青なフレンチキス。
いくら国策でも俺達には意味の無い物だ、なんて考えて。
だってそうやって意識をさ迷わせとかないと溺れてしまう。
そんな現場に入って来た3人。
その延長の性行為を彷彿させるには足るだろう、この人は十二分に激しい。
視界の端で表情を強張らせ、楽しんでいたであろう会話が止んだ彼らを捉えた。

「なん、で…?」

そうだよね。
何やってんの、とか、場所考えろよ、とかごく道徳的観点からの意見なんて浮かばない。
その後、何とかしなきゃと思ったらしいニノが智くんを、相葉くんが俺をそれぞれ引きはがした。

「ふ、二人とも場所考えろよ。」

動揺か、声が震えている松本。
だけどそれだけ発すると口をつぐんでしまった。

「何で止めんの?翔くん、止めてって言ってなかっただろ。」

この一言にどれだけ威圧感があったか。
不快感を隠しもせず、智くんが怯んだニノの手を掴んだ。
いけない。
そう思った時には今度はニノが智くんに噛み付かれていた。

「っ…んんっ…ふ…」

静まり返った楽屋に、ニノの息遣いと水音だけが響く。
これで、誰が止めようなんて馬鹿げた考えを起こす?
ショックだっただろうね。
相葉くんの目にうっすら涙が浮かんでた。
こうなった智くんを止める術を知らない俺は、二人を楽屋から出す事しか出来なかった。

「智くん、止めてよ。」

返答はない。
聞こえていないよね。
もう、されるがまま堕ちてるニノ。
頭の中、彼を犯す事しかない。

「ニノ…和っ…。大好き、愛してるよ。聞いてる?」

「大野、さん…あぁっ…」

止める方法は一つ。
ニノ自身が拒否する事。
果たして堕ちてるニノに出来るだろうか。
いいや、出来ない。
甘く優しく溶かすようにニノを抱く彼を、ただ傍観しているしかなかった。
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