気象

□不変の安息と不安
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玄関のチャイムが鳴る。

「お疲れ様。」

今日は午前中仕事だった彼は直行してくれたらしい。
髪の毛もいい感じにセットされたままだ。

「お昼食べた?」

「いや、まだだけど…。」

「と、思いまして櫻井翔、智くんの為に用意しておきましたよ。」

「どれどれ………。翔くん、下ごしらえくらいはしてあんの?」

もちろんそんなの

「出来るわけないじゃん。」

智くんの盛大なため息が聞こえた気がする。
気がする、気のせいだ。

「何を食べるの。」

「肉と野菜をどうにかしたら何とかなるって。」

我ながらナイスアシスト。
今度は本当にため息をついた智くんは観念したように手を洗いに行った。



「肉出して。塩を…そのスプーンに半分と胡椒は3回ずつ降って。」

「翔くん、この野菜何?」

「キャベツとレタスと白菜。」

もっとも、どれがどれだか解らないけど。

「キャベツと白菜使うから。」

ザクザクと野菜を刻む音、その様子をじっと眺める。
やっぱ器用だなぁ。
見てる間にそれらはフライパンに入れられしんなり(?)って状態になり、ソースとかで味付けされた。
その後肉も焼かれて野菜の上に豪快に盛られる。

「こんでいい?」

味の保証は出来ないよ、と言う智くん。
俺は指示された事しか手を出していないからきっと大丈夫だ。
お茶を出してご飯をつけたら

「いただきます。」

少し遅めの昼食。

「翔くん料理覚えたら絶対旨いのになぁ。正しい分量とかしっかりしてさ。」

「それは…まず子供包丁買ってからですね。」

「こないだ言ってた切れないやつ?」

「そうそう。安全第一。」

ってくだらない事を話してながら昼食を終えて、後片付けなら俺にも出来る。
リビングで寛いでいる智くん、なんか眠そうだな。
ちょっと切ない気持ちになりながらもそれは無視して片付けを再開した。
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