気象

□それは俺だけの
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出て来た時はまだ明るかったのに。
辺りは暗い。
遅いなぁ。
いや、彼にだって用事なんかもあるのだろうけど。
連絡くらいくれたっていいじゃないか。
なんか、脱力感。



暫く待って、玄関のチャイムが鳴る。
そろりとスコープを覗き、鍵を開けた。

「遅ぇよ。」

「これ持って。ほら、早く入ろう。」

早く入ろうって俺ん家だし。
遅いし。
もっと文句を言ってやりたいが、渡された紙袋から美味しそうな匂い。
まぁ、後でいいか。





「何で焼鳥?」

「来るときにあんまりにもいい匂いがしたから。タコ焼きもあるぞ。」

ってそういう問題じゃない。

「ニノは飲み過ぎるなよー。」

「はいはい。」

返事とは裏腹にまた酒に手を伸ばす。
こうやって並んで座って、凭れるのが好きだ。

「こら。こっち。」

「ちょっ…。」

酒を取り上げられ、オレンジジュース(だと思う)と交換された。
ちょっと酷くない?

「リーダー、酒!」

「だーめ。沢山飲んだらニノ寝ちゃうでしょ?」

「うーん、さては体目的だな。」

と言うと軽く笑って「そうだよ」なんて言う。

「本気で?凹みますよー。」

「そんな訳ないだろ。」

どっちだよ、この酔っ払い。
酔っ払いは俺もか。

「げ、なにこれ甘っ!」

「マンゴー…の酒。」

「酒かよ。」

「オレンジジュースが良かった?」

そうじゃないけど。
言いくるめられるのは目に見えている。
リーダーをじとっと睨んだらなぜか抱き着かれた。

「待ちなさいって、零れるから…ねぇ、リーダー?」

「じゃあ早く飲んじゃえよ。」

「なによその無茶振り。」

言われなくても飲みますよ

「…甘っ。」

「一口ちょーだい。」

肩に顔を乗せて、横から抱き着かれてるから耳に息がかかる。
絶対赤くなってるなぁ、これ。
ゆっくり振り返ると目が合った。
笑ってる。

「戴きっ!」

スルリとグラスを奪って、オレンジ色の液体を飲み干すリーダー。
「甘ぇ」とか言って眉を顰ている。
ベタだけど、キスされるかと思った。
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