企画物部屋

□甘さ隠し
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「ただいまー。おかえりー。」

「ただいまー。おかえりー。」

2人で家に挨拶をしながら一緒に部屋へ帰る。
久しぶりにスペシャルだったから、飲むかな、と考えて隣を見た。
すると、同じことを考えていたのか智もこっちを見ていた。

「飲む?」

「うん。用意するから、休んでていいよ。…先に風呂入っちまってもいいけど。」

「やだ。貴方さっき一緒に入るって言ってたじゃん。」

「まあな。」

リビングで腰を落ち着けると、習慣とは怖いもので手はゲームに伸びる。
あと少しでクリア出来そうなんだった。
慎重に、だけど手際よく。…あと少し…。

「ニノ、そろそろ出来るよー。」

「うん、あとちょっと…。」

あとちょっとって、具体的にはどれくらいなんだろう。
良く分からないけど、多分相当長い。
今回のあとちょっと、は呆れた智が先にビールを飲み始める程度には長かった。

「先に始めちゃってるし。」

「お前が遅いからだろ。」

「それはそうだけど。待っててくれてもいいじゃん。」

「大分待ったよ。」

「どれくらい?」

「1時間くらい。」

「…申し訳ない。」

「いいって。飲もうぜ。」

向かい合わせでもいいけど、やっぱり並んで座って。
軽くつまみながら飲む。
その方がべったり出来るから。

「今日、見付けてくんねーのかと思った。」

「見付けたでしょ、ちゃんと。」

「先に見付けたらどうしよう、ってすっげえ緊張したんだから。」

こっちは隠れていながら、何処に居るのか見透かされているみたいですごく緊張したのに。
その緊張と、本当に見付けてくれたらいいのに、という期待。

「見付けてくれてもよかったのに。」

「ニノに見付けてほしいって言ったじゃん。」

なのにこの人は「ニノ、絶対俺の事見付けてよ」とプレッシャーをかけてきた。
それだけじゃない。1回目、2回目とすぐさま俺のいそうな場所を絞り込んで畳み掛けて。
だから、何としても見付けざるを得なかった。

「貴方だって、あとちょっとで見付けちゃいそうだったじゃない。」

「見付けてないだろ。ちゃんと居ない方開けたし。」

居ない方、と言う事は、つまりこの人は自信を持って2つに絞ったわけだ。
恐ろしい人だよ、本当に。

「でも、結構悩んでたでしょ。」

「悩んで…うーん…んふふふ…」

何でそこでにやけるんだよ。
何が面白かったのかは分からないが、急に笑い出した隣の人に不審な目を向けてみた。
すると、急に肩を組まれるもんだから持っていた缶を落とす所だった。

「何?」

「可愛くて、お前…もう、絶対甘やかさないからな。」

意味が分からない。

「何の事だよ。」

離してほしくて押してみるが、この馬鹿力。聞いちゃいない。

「靴がある方が居ない方に決まってんじゃん。」
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