10000hit企画A

43.ベッドの下
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ベッドの下





「ん、アッ…!」
「…イくぞ…っ」
「ア、アッ、あぁッ…!」



明日は二人揃っての休日、という事で暗黙の了解のように床を共にする。
ホテルでゆっくりと一晩を共にし、明日はぶらぶらとどこか行く感じになりそうだ。

「喉乾きやした」

テメーで煎れろとか騒いでいるのを無視ししていれば結局お湯を沸かし、温かいお茶を入れてくれる。
いつも甘いけどした後の土方さんの優しさは異常だ。

差し出された湯飲みを持ち、感謝を声にすると満足気に自分も飲みながら煙草に火を付けた。
ニコ中のお蔭で部屋の中が煙っぽい。
あースプリンクラーとか作動しちゃえば良いのに、とお茶を置いた暖かい手で腰を擦られながら思うのはありふれた日常だ。
嗚呼腰が痛い、

「そうだ、土方さん」
「あ?」

ちょっと魔が差して下らない事を言いたくなった。

「そいやさっきアンタがガタガタベッドを揺らしている時に」
「…?」
「下から声が聞こえたんでさァ」

その時の驚いた顔ったらない。
煙草を持っていた腕が止まり、目が見開く。
そうそうそんな顔が見たかった。

「女の啜り泣くような声で」
「そ、そりゃお前、テメーの声じゃね、」
「んな訳ないでしょ?俺ァヤってる時に『助けて』なんて言う趣味持ち合わせてないですぜ」

強ばったまま腰掛けていた足をぎこちなくベッドの上に乗せる。
男に捨てられた、いや殺された女って事にするか。
そうだな職は商売女とか。
こういうのはしっかり構想を練った方がより楽しめる。

「イヤイヤイヤ、お前の聞き間違えだろ?」
「そうですかねィ?結構はっきり…」

そう言いながらベッドの端を見詰める。
勿論ながら何も見えていない。

「…総悟…?」

おっかなびっくりしながら声を出す土方さんは本当面白すぎてムービー撮っとけば良かった後悔した。
次は絶対ムービー撮ろう。
ネットに上げてやろう。

「あ、そうそう、はっきりでした」

見えたとも聞こえたとも言わないでやるのが良いと思う。
さっきまで余裕でお茶を淹れていたのが嘘のようで、可愛く見えた。

「いや、見間違えだろ、マジ見間違えって言ってくれ…」

ブツブツ下を向いたまま騒いでいるからついつい更に脅かしてしまいたくのはSなら仕方ない事だ。
デカイ図体でイイ大人で、何でまぁそんなもん信じるんだか理解し難いが。

「怖いんですかィ?」
「そんな訳ねぇだろッッ!」
「じゃあベッドの下見てきてくだせェ。俺は怖いんで」

その時の顔ったらなかった。
ここ最近で一番の酷い顔だ。

「だ、誰もいる訳ないだろッ」
「いないんだったら良いじゃねぇですか」

慌てて言う姿は本当に馬鹿で愛しい。
それでもガンとして見に行かない姿に、じゃあ先に寝ますと布団に潜った。
ポーカーフェイスは得意だがあまりの動揺ぶりに笑いが込み上げてきそうだったからだ。


(此処のベッド足がなくて床とくっついてんの知らないんですかィ?)







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