10000hit企画A

41.ケーキ
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ケーキ





「甘いもん食いてぇなァ」
「え?今ですか?」

今は深夜、テッペンを越えた時刻。
こんな時分に甘いものなんて中々食べられないと思うのはこの大所帯の屯所の中でも大分限られていると思う。

「今」
「カステラなら確かまだ残ってますよ?」

助けて貰ったお礼とかで先日若い娘がカステラを何本か置いていった。
勿論視線の先は副長で、古典的だけど目元はハート。
隊きってのモテ男というのは伊達じゃないなぁと呆れを通りすぎて尊敬に近い気持ちで見ていた。

「生クリーム系が良いなァ…」

この感じ。
あれか、買ってきて欲しいって事か?
いやまぁさ、それ自体はいつも通りだから良いんだけど。
今日は雪で外滅茶苦茶寒いんだよな…。
多分、だから買いに行かせようとしてるんだろうけど。

「エクレアとか?」
「てかケーキ食いたい」

被せるようにその台詞。
え、もう何だ、隠すつもりもなく食いたいから買ってこいっていう命令だよね。

「…ショートケーキ?」

こうなったらもう諦めたりしないだろう。
暖かい部屋は魅力的だけど、下僕体質の俺は席を立った。
帰ってきたら思う存分俺は沖田さんをいた頂きます、と心に決めて。

「買ってきますよ」

苦笑混じりに言えば、赤い瞳は此方を向いたまま外れず、更には近付いてきた。

「…俺も行く」
「え?」
「決まんねぇから一緒行くわ」

しっかりと上着も羽織って連れ立って部屋を出た。
夜中の外出、しかも大好きな人と一緒だとどうしてこんなにも楽しくなってしまうんだろうか。

周りの雪も溶けていくような気がした。


「…お前どこの乙女だよ」


冷ややかな視線すら熱く感じる俺は大分重症だ。








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