10000hit企画@

4.苺パフェ
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甘い香りと甘い空気





苺パフェ





「あ、これ食いたい」

いつものファミレスでいつも通り可愛い部下に集られ、嬉しそうにハンバーグを食べていたと思ったらナプキンが入った紙の箱を指差した。
目をやればでっかく苺フェアの文字の下にパフェの写真。

「食いたきゃ食えば良いだろ」
「アンタも食ってくれやす?」

はぁ?何を言っているんだ、このガキは。
甘い物が苦手と分かって上での発言に眉を寄せてしまうのは仕方ない事だと思う。
マヨネーズを乗せた最高の食べ物に箸を動かしながら分かりやすく顔を歪めた。

「アンタが食わないなら良いです」
「はぁ?」

デザートはそう食わない事は分かっているだろうに、この発言。
いつもならそんな事お構い無く、むしろこっちに聞くことなく頼むくせに。

「でっかいし、一人じゃ食いきれないかもしれないでしょ」
「だったらまたにしろよ」
「このフェア明後日までですよ」

食わないというのをここまで出しているというのに引かないこのポーズは逆に凄い。
まるで子供が駄々をこねているかのようだ。

「明日また来たら良いだろ」
「嫌でさ。今食いたい。あーあ万事屋の旦那だったら食ってくれるのになァ…」

その名前が出るだけで俺がイラつくことも分かって上で言っているんだから達が悪い。
いつからそんな生意気になったと言いたくなるが、よく考える事もなくこいつは最初からこんな奴だった。

「おい、飯食ってる時にアイツの名前出すなよ。折角の飯が不味くなる」
「アンタが食ってくれれば丸く収まるんですよ」

そう言ってる側からたまたま横を歩いていたウェイトレスを捕まえ、苺パフェ一つ追加で、と頼んでいる。
食わねぇって言ってんのに。

「頼んだからには残さず食えよ」
「ハイハイ」

残ったハンバーグを綺麗に食べ終えて、ジュースを啜る。
底に少し残った液体をブクブクと遊びだしたので、止めろ、と言うのもいつも通りの光景だ。
ここまで子供じみた行動、屯所ではあまりしない。
二人きりで安心しての行動なのかと思うと親心で可愛く思ってしまう。
そうして甘やかしてきたからこそ、こんな歪んだ性格になってしまったのだろうけど。

「おまたせしました。苺パフェになります」

ウェイトレスがトレーにでかくて赤いパフェを持ってくる。
空いた皿を片付けて机に乗っているのは飲み物とパフェのみ。
おかしくね?男二人の机にこの図って。

「うめぇ」

長いスプーンで食べている姿は天使のようで、本当に可愛いと認めざるを得ない。

「はい、あーん」

その天使の顔で悪どい事をするのが総悟だ。

「いらねぇって」

食後の煙草を楽しんでいるのに、そんな甘ったるいものが口に入ってたまるか。
差し出されたスプーンを避けるも諦めずぐいぐいと押してくる。
さっきまでの天使の顔はどこにいった。
今目の前に座るのは笑みを浮かべた悪魔しかいない。

「あーん!」

分かった分かった、とキリがないので差し出されたスプーンを手に取ろうとすると嫌だと言わんばかりに強くスプーンを握る。

「あーん、て言ってるじゃないですか」

つまり、このまま口を開けて食べろと。
なんて羞恥プレイ?
いやそれ以前に、

すげぇ可愛いんだけど!

「早く口開けなせぇ!」

笑顔からいつの間にかイラついているような表情でスプーンを押し付けてくる。
…さっきのは訂正だ。

コイツはやっぱり天使のように可愛い。

「分かったって」

デレデレしそうな頬の筋肉に鞭を打ち、ポーズだけでも嫌々やってやっている、という風に装って口を開ける。

「はい、あーん」
「ん…甘めぇ」

口の中には甘ったるい味が広がり、俺達の周りにも甘い空気が流れた。
いつもは口に入れたいとは思えないドキツい甘さも今だったら、どんだけでもたいあげられる気がする。

「はい、あーん」
「ん、」

数口与えた事で満足したのか、後は静かに一人で食べ始めた。
一瞬の幸せを食べ終わるまでにじっくりと噛み締める。
嫌がらせのつもりなのかもしれないが、全く意味をなしていない。
それも俺をニヤつかせるには充分な理由で、もう隠す事も出来ない。

「…ニヤニヤしてんな気持ち悪い」

いやいやそれは無理な相談だ。
今更になって此方にダメージを与えられなかった事が恥ずかしくなってきたのか、頬を赤らめていた。

「さっきの何?」
「…うるせー」

その後は答えることなく無言で食べ終え席を立ち、午後の仕事に向かう。



「…恋人っぽい事してみたかったんでィ」



俺の恋人はマジで天使でした。








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漫画とかに影響されちゃった的な。
パフェ一個ぐらい余裕で食べれるんです18だもの。

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