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sweet night
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「お疲れ様でさぁー」

総悟はバイト仲間に手を振り、店を出た。
明日は三限からなので家に帰ればゆっくり眠れる、と時計の計算をしながらいつもの帰路をゆっくり歩いていた。

「…ッ」

明るいうちには子供が騒ぐ声しか聞こえない公園からは似つかわない人の声が微かに聞こえた。
ヤりてえならラブホにでも行けよ、と心の中で毒付きながら横目で覗いてしまうのは年頃の若者としては正常だと思う。


(え…?)


そこにいたのは黒い男に抱き抱えられながら、倒れている若い女。
女の腕はだらりと落ち、明らかに異常に見えた。

(やべぇ…)

事件、なんじゃないのか。
自慢じゃないがこんな事件性にまみれた場面に出くわすのは始めてで、足がすくみそのまま動かなくなった。

「…おい」

何分経ったのか、数秒だったのか、混乱した頭では分からない。
黒い男は立ち尽くしていた総悟をじろりと見た。

「見たんだろ?」
「…」

何も言えずに立ち尽くした総悟の方にゆっくりと男は歩み寄る。
蛇に睨まれたように全く動けず、恐怖心と共に綺麗な姿にも目を奪われた。
口の端から溢れる血液が白い肌と黒に良く似合っている。

「野暮な奴だなァ。ビビらなくてもガキは好みじゃねぇから吸わねぇよ」
「アンタ…なに…?」

ニヤリと笑い総悟の頬に冷たい手を掛ける。



「吸血鬼、って知ってるか?」








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