その他ゲーム系

□膝小僧
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「もう中学生だから、手なんかつながなくても大丈夫だよ!」

 と、得意そうに言っていた純也。

 夏ということで、辺りが少し明るかったのもあるだろう。

 純也は一人でサクサクと道を進んでいく。

 それはもう、意気揚々という言葉を見事に体現したように。

 こんな様子で、俺がついて行く必要があるのかと思った。

 公民館に着くと、純也は率先して語り手の傍に寄って行き、他のどの子供たちよりも真剣にその話を聞いていた。

 俺としては、真新しい都市伝説や怪談を聞ければと思っていたが、どれもありきたりで、知っているものばかりだった。

 最後の百話目が終わった後、大人たちが仕掛けた扇風機で風を送り、いかにもな演出をしてみせる。

 足音や扇風機の機械音がガタガタ鳴り響いている中、俺は心の中で「お疲れ様」と呆れながら呟いた。

 なんの収穫もなく、小さい子供ならばいざ知らず、こんなもので肝を冷やせることなど出来なかった。

 何をしにきたのか…と、辟易する。

 その帰り道、どうして叔母さんが俺を一緒に行かせたのか、そこでようやく理解した。

 きっと、犯罪者などという即物的なものの危険性に加えて、こういった事態も、叔母さんは予測することが出来たのだろう。
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