その他ゲーム系
□膝小僧
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「に、兄さん…ぜったい、ぜっっったい手はなしちゃダメだよ!!ま、迷子になるからね!!」
「純也、早く帰らないと叔母さんが心配するぞ」
「う、うぅ……い、いま歩くから!行くぞ…よしっ!!」
最初、公民館付近はそれぞれの帰路につく子供がたくさんいるから、純也も普通だった。
しかし、不意に気付く。
公民館から家までの間の真っ暗闇に。
大人たちの演出に、モロに引っ掛かって絶叫をあげていた純也は、それがまだ尾を引いているのか、街灯の下から動けなくなっていた。
俺の手をぎゅっと握り、それでも怖かったのか、今度は肘の辺りに絡みつく。
グイグイと引っ張られ、俺は純也の方に体を大きく傾けて、なんとも不恰好に歩くことを強いられた。
また、時々涙目の純也が路地の隅から現れた猫に驚き、悲鳴をあげる。
子供の甲高い声に、耳がずっとキーンとしていた。
体力を使いきり、来る時の倍以上の時間をかけて、やっと家に帰り着く。
「あの子、怖がりのクセに怖い話、大好きなのよね」
「やっぱり…」
俺は変な体勢でいたせいで凝った肩を回しながら、叔母さんに帰り道の純也の様子を話した。
叔母さんは驚きもせず、にこにことしながら言った。
……嵌められた。
大人は汚い……ということを、俺は改めて痛感した。
当の本人はというと、逃げるように自室へ駆け込み、明りをつけたまま、頭から布団をかぶって眠りについた。
もはや本を読み進める気力もなくなり、俺もさっさと自室へ戻って眠ることにした。