FF駄文
□A girl's suffering
4ページ/4ページ
その後、騒ぎ立てるエッジを(力ずくで)黙らせ、無茶なお願いをするリディアを何とか宥めすかし、微笑ましい笑みを向けてくるセシルとローザを睨み付けて、何とかカインは頭の痛い状況から脱出していた。
深いため息を吐き、セシルとローザに引きずられるように連れて行かれてるエッジに、苛立ちを滲ませた視線を向ける。
リディアが自分になつくのは、自分のせいではない。
むしろ、エッジが意地悪ばかりするから、リディアが自分の方へ来ている事をあの王子は気付いていないのだろうか。
否、気付いているだろうが、好意を寄せている相手には素直になれない性分なのだろう。
彼は恐らく、好きな子程苛めてしまうタイプなのだ。
(全く…逆恨みもいいところだろう。どっちがお子様なんだ。)
「ねぇねぇカイン。」
カインがエッジに対して呆れていると、不意に腕をクイクイと後ろに引っ張られる。
3人が前を歩いているのだから、自分の近くにいるのは1人しかいない。
先程の行為や告白やらが脳裏を過ぎり、カインは若干顔をひきつらせながら振り向いた。
先程の告白が、本気の告白とは思っていない。
リディアは、セシルとローザの事も大切で大好きなはずだ。
ただ、セシルにはローザがいるし、ローザにはセシルがいる。
それで遠慮して、自分の名前を出しただけにすぎないだろう。
カインはそう思っていた。
「な、何だリディア?」
なるべく自然を装って優しくリディアに声をかける。
するとリディアはどこか気恥ずかしそうに、モジモジしながら上目遣いでカインを見つめてきた。
「あ、あのね…あの…。」
「ん?どうした?」
普段、いい意味でも悪い意味でも、何でも素直にポンポンと口にするリディアが、口ごもるなど珍しい。
カインが少し身を屈めて優しく問いかけると、リディアはギュッとカインの腕を両手で掴んだ。
「…カインは、胸ちっちゃい女の子は嫌い?」
「っ…!?」
どうやら、先程の話をまだ引きずっているらしい。
唐突な質問に、思わずカインは絶句してしまう。
すると自分を見つめるリディアの目に、うるうると涙が浮かび上がった。
「…やっぱりカインも、胸ちっちゃい子は嫌いなんだ…。」
今にも零れそうなほど涙を溜め、リディアがションボリと項垂れる。
途端カインは焦り出し、リディアの顔を覗き込んで目尻に溜まった涙を長い指で優しく拭った。
「い、いや、嫌いじゃないさ。そもそも、そこまで気にする程リディアの…その、胸は小さくないと思う。ゴホン、だから気にしなくていい。俺は、リディアがリディアらしくしているのが一番いいと思うぞ。」
カインは悟らせるようにそう告げて、リディアの頭を優しく撫でる。
するとションボリと俯かせていた顔を上げて、リディアが再びカインを上目遣いで見つめた。
「…ほんと?」
「ああ、本当だ。」
ハッキリとカインが肯定すると、リディアの表情が喜びに満ちていく。
リディアは満面の笑顔を浮かべると、掴んでいたカインの手にしがみついた。
「よかった!あたし、カインの事好きだから、カインに胸ちっちゃい子は嫌いって言われたらどうしようかと思ったの。」
「…そうか。」
無邪気にしがみついて好意を口にするリディアを、カインが温かな眼差しで見つめる。
こうして無邪気に、なついてくれるのはやはり嬉しいものだ。
ニコニコ笑うリディアにカインがそう感じていると、リディアが不意に顔を前に向ける。
そしてやや俯きがちに、ポツリと小さな声で呟いた。
「…あたし、本気だよ。」
「…!」
驚いてリディアを見たカインの視界に、微かに赤くなったリディアの耳が映る。
本当にリディアは自分を――。
「リ…」
「ほら、遅れてるよ!行こうカイン!」
カインが口を開くより先に、リディアが笑顔を浮かべてカインの手を引っ張る。
――いつか自分の気持ちにケリがついたなら、この少女の想いに応えたい。
微かに色付いたリディアの頬を見て、カインはそんな想いを込めてリディアの手を強く握り返したのだった。
Fin
思ったより甘くなかったです、はい;;
ここまで読んでくださりありがとうございました!
.