FF駄文
□空色の…
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ワイワイ楽しく話をしながら食事をしていると、食事を終えたセシルが椅子から立ち上がる。
そして申し訳なさそうな表情を浮かべ、リディアに視線を向けた。
「久しぶりに会えたのに申し訳ないんだけど…ジオット王と、明日の打ち合わせをしに行かなくちゃいけないんだ。」
「やだなぁ、これからはいつでも話ぐらい出来るんだからいいよぉ。行ってらっしゃ〜い!」
リディアがまだ食事を終えていないのに、席を立つのが心苦しかったのだろう。
だが申し訳なさそうなセシルにあははと笑い、リディアはひらひらと手を振った。
続いて、ローザもそっとセシルに寄り添うように席を立つ。
「私も行くわセシル。」
残った3人にじゃあ、と手を上げて、2人は食堂から出て行った。
リディアはチラッと時計を見て、慌てたようにヤンにも声をかける。
「わっ、もうこんな時間なんだ!ヤンもお稽古するんでしょ?あたし、もうちょっとかかりそうだし、行ってもいいよ?」
元々食べるのが遅い上、話しながら食べていたのが災いしたのか、リディアの前にはまだ結構な量が残っていた。
「…リディアがそう言うならば…1人で部屋まで行けるか?」
毎日の鍛錬を欠かさずしていたヤンはリディアがそれを覚えていた事に驚きつつ、申し訳なさそうにしながらリディアの申し出をありがたくうける。
だがリディアがいた頃、リディアの世話をずっとしていたせいか、ヤンは心配して中々席を立とうとしなかった。
「もうっ子供じゃないんだから大丈夫だってば。」
リディアはクスクス笑って残った食事に手をつけ始める。
そんなリディアを見て、これ以上子供扱いするのは偲びないと思ったのだろう。
ヤンはぺこりと頭を下げてでは、と片手を上げてその場から去っていった。
「……えと、カイン…だよね?カインも、退屈でしょ?食べ終わったなら、行ってもいいよ?」
ヤンが去った後、先程からずっと黙ったままのカインにリディアが怖ず怖ずと声をかける。
突然話しかけられ、カインは驚いてリディアを凝視した。
「……何故名前を?」
どうやら、名前を教えていないのに名前を知っていた事に驚いたらしい。
リディアは一瞬キョトンとして、それからすぐに慌てたようにカインに向かって謝罪をした。
「あ、あ、そっか!あたしは昔セシルに聞いたから知ってるけど、カインはあたしの事知らないんだよね?なのに、知り合いみたいに話しちゃってごめんなさい!」
まくし立てるようにそう言って、勢いよく頭を下げるリディアにカインは目を丸くする。
だが別段怒っていたわけではないので、慌ててリディアに頭を上げさせた。
「い、いや、別に怒っているわけじゃない。ただ不思議に思っただけだ。だから、謝らなくていい。……それに、寧ろ………」
そこまで言うと、カインはぐっと口を噤んでしまう。
言葉の途中で再び黙ってしまったカインが不思議で、リディアは首を傾げてカインの顔を覗き込んだ。
「…?カイン?」
リディアが呼びかけると、カインは厳しい…だが辛そうな表情でリディアをジッと見つめる。
綺麗な青の瞳に見つめられ、リディアは無意識でほんのりと頬を染めた。
昔見た、カインの姿がリディアの脳裏に浮かび上がる。
今のような軽装ではなく甲冑や兜を身につけていたから、見事なまでの金髪は今のようには見れなかったが。
兜の下から覗いていた、青い、青い瞳だけは鮮明に覚えている。
暗くて、冷たくて…深い海の底のように寂しそうな目を。
だが、今は……
「……謝らなくてはならないのは、俺の方だろう…。」
「え…」
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