FF駄文
□precious a sensation
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2人がキッチンから出てくると、男3人はハッとしたように顔を上げ、2人を凝視する。
リディアは何となく気恥ずかしくなり、ローザの後ろにサッと身を隠した。
「ウフフ、お待たせ!」
「一体何をしてたんだい?朝からずっといたみたいだけど…。」
「つーかこの甘い匂いは何だよ?この匂いも朝からずっとしてるよな?」
「…?リディア、何隠れているんだ?」
3人はそれぞれ疑問を口にしながら首を傾げる。
ローザは悪戯っぽく笑い、後ろ手に隠していた包みを前へと回した。
「今日はバレンタインでしょう?だからみんなにチョコレートを作っていたのよ。」
ローザはどこか楽しげにそう言って、3人に包みを渡していく。
「あぁ、バレンタインか!最近日にちの感覚がなくて、すっかり忘れてたよ。ありがとうローザ。」
「やっぱローザも乙女だねぇ。ありがたく頂くぜ!」
「チョコレートか…ありがとう、ローザ。」
どことなく嬉しそうに受け取る3人に、ローザも満足そうに笑顔を見せた。
「でもリディアもずっとキッチンに籠もっていたよね?…という事は、リディアもこれを作るのを手伝ってくれたのかい?」
セシルの言葉に、ローザはどこか得意気な表情を浮かべる。
そして後ろにいるリディアに目で合図を送りながら、ゆっくりと口を開いた。
「ウフフ、手伝いじゃなくて、リディアも作ったのよ。ほら、リディア。」
ローザがそう言った瞬間、3人は目を見開いて驚きを露わにする。
その反応に満足しながら、ローザはリディアをそっと前へ促した。
リディアは恥ずかしそうに俯き、そっと手に持っていた器をみんなの前へと差し出す。
そして、気まずそうにポソポソと呟いた。
「…初めて作ったから、上手くできなかったの……。」
申し訳なさそうに俯くリディアを見て、セシルが優しげに目を細める。
カインも穏やかな表情を浮かべ、慈しむような眼差しでリディアを見つめた。
「そんな事ないよリディア。とっても美味しそうだよ。ありがとうリディア。」
「その気持ちが大事なんだ。その、ありがとう。」
2人にそう言ってもらえて、リディアの表情がパァッと明るくなる。
だが、その表情はすぐに暗いものへと変わってしまった。
「うっわー…ぐっちゃぐちゃじゃねーか。丸めりゃいいだけなのによ、何でこんなんなるんだ?これじゃ、ガキが作る泥団子のがよっぽどましじゃねーか?」
――エッジの一言によって。
エッジがそう告げた途端、リディアの表情が強張った。
もちろん、言った言葉はエッジの本心ではない。
エッジはただ、リディア手作りのチョコレートを何とか独り占めしようと思ったのだ。
「こんなんセシル達に食わせるわけにゃいかねーだろ。だから、俺が食ってや…」
「うっ……そ、そんな言い方しなくてもいいじゃない…!!エッジの馬鹿!!!」
エッジの言葉を最後まで聞かず、リディアは涙を浮かべてその場から走り去る。
そんな事ないから食べてみて!と突っかかってくるだろうと思っていたエッジは、正反対の反応をしたリディアに思わずポカンとなってしまった。
「リディア!!」
呆然とするエッジを無視して、カインが大慌てでリディアの後を追いかける。
そのカインの声にハッと我に返り、エッジも追いかけようと動き出すが――。
「…リディアを追いかける前に、逃げた方が身のためよ?」
にっこりと笑顔を浮かべたローザに、行く手を阻まれてしまった。
笑顔のローザからどす黒い空気が溢れている。
瞬時にエッジは真っ青になり、慌てて弁明し始めた。
「ち、ちが…!リディアが作ったっつーからつい独り占めしたくってよ…わ、悪かったって!」
「…リディアね、みんなに日頃のお礼がしたいって言ってね?それは一生懸命だったのよ。」
そう言って、ローザが弓と矢に手を伸ばす。
そして笑顔のまま、くいっと顎で後ろを向くよう促した。
「早く逃げなきゃ、セシルと私に殺されるわよ。彼もエクスカリバーを取りにいったし。」
「ま、マジで悪かったってええぇっ!!!」
「…エッジ、覚悟は出来てるね?」
そうこう言っている間に、セシルが戻ってきたようだ。
セシルは笑顔を浮かべているものの、怒気と殺気が入り混じった、凄まじい気配を放っていた。
その手にはローザが言ったようにエクスカリバーが握られていて、エッジの全身から血の気が引く。
逆からはギリッと弓矢を引く音が聞こえ、エッジは急いでその場から逃げ出したのだった。
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