捧げものC

□笑う門には福来たる!?
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出場者全員がクジを引き終え、ついにお笑い大会の幕が上がった。
仲間内ではどうやら自分がトップバッターらしく、ヒナタは震える手をギュッと握り締めて深呼吸を繰り返す。
ヒナタの順番は14番。
100人以上いる出場者達を思えば、かなり出番は早い。
がんばろう、がんばろうと心の中で繰り返すが、その気持ちは瞬く間に萎んでいった。
…ヒナタより先の出番の者達が、ことごとく低得点なのだ。
それもそのはず、綱手以外の4人は出場者達がどんなネタをやってもニコリともせず、10点も持ち点があるにも拘わらず1点か2点しか出していなくて。
しかも頼みの綱でもある綱手は、酒の飲み過ぎ(恐らく大会が始まる前から飲んでいる)でかなり泥酔している。

(ど、どうしようどうしよう…!役に立てるならがんばろうと思って出場したけど…あんなに面白いネタや上手い物真似でも、みんなちっとも笑わないよ…私なんかがやったって……。)

ヒナタはフルフルと震えながら、ギュッと自分の衣服を握り締めた。

「…大丈夫だヒナタ様。ゆっくり息をして、リラックスして…。」

出番が近付くにつれ、余裕を無くすヒナタに気付いてネジが優しく声をかける。
ネジはヒナタの背中をあやすようにトン、トン、と叩き、安心させるような柔らかい笑みを浮かべていた。

(…ネジ兄さん…ネジ兄さんもネタの最終確認とかしなくちゃいけないはずなのに…。)

周りの者は皆自分のネタの最終確認をしているというのに、それでも自分を気遣ってくれるネジに、ヒナタの胸がじんわりと温かくなる。
瞬く間に緊張は薄らいでいき、ヒナタは大きく息を吐くとネジに満面の笑顔を向けた。

「あ、ありがとうネジ兄さん…!わ、私、がんばるね…!」

「…っ…ああ。審査員や観客など野菜だと思えばいいさ。最後のオチで、審査員を一睨みでもしてやればいい。」

「フフッネジ兄さんらしい…!あ、そろそろ、かな…そ、それじゃ、行ってくるね…!」

ヒナタが笑顔で礼を述べると、ネジは仄かに頬を染めてヒナタにアドバイスをする。
すると丁度ヒナタの前の13番が呼ばれ、ヒナタもステージ脇へと移動していった。

(ヒナタ様の中で、俺への好感度はだいぶ高まったはず…。フッ…今日でお前らとの平行線から抜け出してやるからな…!!)

ヒナタの後ろ姿を見送りながら、ネジは自身のネタを脳内に思い浮かべてニヤリと笑みを浮かべる。
次いで審査員席にいるサスケ、サイ、我愛羅と、赤丸とネタ合わせをしているキバ、そして準備運動をしているナルトを睨み付けた。

「はい、得点が出ました!13番、木の葉丸君、モエギちゃん、ウドン君によるマ○モのおきての物真似ですが…じゅ、11点…!お、惜しくも現在の最高得点には届きませんでした…!」

「い、意外に得点が伸びませんでしたね…。」

そうこうしている間に、ヒナタの前の番である木の葉丸達の得点が出たようだ。
やはり低得点を叩き出した審査員達に、最早リーとテンテンもリアクションの取りようがなくなっている。
すると今しがた芸を終えた木の葉丸達が、猛然と抗議し始めた。

「ちょっと待てコレ!!何でだよ!?完璧だったぞコレ!!」

「いっぱい練習したのに…!!」

「納得いかない…。」

いきり立つ木の葉丸に触発され、モエギとウドンも審査員にそう言い募る。
ちなみに、審査員別の得点はシノが2点、綱手が6点、サスケ、サイ、我愛羅の3人が1点ずつだった。
3人は1点しか入れなかった3人を睨み付け、ギャーギャー文句をわめきたてる。

ダンッ!!!

すると心底苛立った様子でサスケが思い切り机を叩き、射殺す勢いで木の葉丸達を睨み返した。

「…うるせぇな……何か文句でもあんのか…?」

美形とはいえ眼光鋭いサスケに睨まれ、即座に木の葉丸達は口を閉じる。
そしてガックリと肩を落として、スゴスゴとステージ脇へと力無く歩いていった。

「おいおいサスケぇ〜…ガキ相手にキレるんらないよぉ〜。」

「うるせぇこの酔っぱらいが!!大体俺は、こんな大会に出る気なんざなかったんだよ!!!それをうちはの再建をちらつかせて無理やり審査員にしたのはアンタだろうが!!!」

呂律の回っていない綱手に注意され、更にサスケが激昂する。
すると綱手はニンマリと笑い、出場者の名前が出る電光掲示板を指差した。

「おやぁ〜…そ〜んな事言っていいのかぁ?ウィッ…次が誰か、見てみ〜?」

「誰が出たって同じ…、…!!」

「あっ…!やっと来た…!!」

「…ヒナタ……。」

「…ヒナタも出ていたのか……。」

ニヤニヤ笑う綱手に舌打ちしながら、サスケがチラリと電光掲示板に視線を向けて動きを止める。
サイは待っていたとばかりに嬉しそうな声を上げ、我愛羅も僅かに目を輝かせて頬を紅潮させていた。
どうやら2人は、ヒナタを餌に審査員を引き受けたようだ。
シノはヒナタが出ている事に心底驚いた様子で、サングラスをクイッと押し上げる。
4人がステージ脇に注目すると、テンテンとリーがヒナタの名前を読み上げた。


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