捧げものC

□笑う門には福来たる!?
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お笑い大会当日――。
広場に特設会場が設けられ、そこにはたくさんの人々が集まっていた。
出場者だけでなく、観客も大勢集まっているようだ。
ヒナタはキョロキョロと観客を見渡し、緊張のあまりガチガチと震えていた。

(ど、ど、どうしよう…ま、まさか、こんなにたくさん人が集まるなんて…。)

綱手がお笑い大会のビラを配り出したのは、ほんの3日前の事なのに。
駄目かもしれない、きっと失敗してしまう。
そんな風に自信をなくしかけたヒナタの肩を温かい手が優しく叩き、いきなりの衝撃にヒナタはビクリと震えて振り返った。

「どうしたヒナタ様。緊張しているのか?」

「へ…ネ、ネジ兄さん…!?」

目の前にいる、あまりにもお笑いからかけ離れた従兄の登場に、ヒナタは緊張も忘れて瞬きを繰り返す。
ここは出場者が集まる場所だ。
まさか、クールで優秀なネジも、出場する気なんだろうか。
驚愕の表情を浮かべて立ち尽くすヒナタに、ネジはクスリと笑いを零した。

「フフッそんなに、俺がここにいるのがおかしいか?」

「えっ!う、ううん!た、ただ、意外過ぎて驚いちゃって…。きょ、強制参加は中忍以下だし、ま、まさかネジ兄さんが出場するなんて思わなかったから…。」

「優勝特典が魅力的だったからな。それより、そんなに緊張しなくて大丈夫だ。貴女のネタなら、里中のみんなは喜んで笑うだろうからな。」

再びガチガチと震え出したヒナタの手に自身の手を重ね、ネジがその手をギュッと握り締める。
ヒナタはポッと頬を赤らめ、オズオズと上目遣いでネジを見上げた。

「そ、そう、かな…?」

「勿論だ。少なくとも俺はそうだし。だから、そんなに緊張しなくて大丈夫。優勝は、俺か貴女のどちらかしか有り得ない。」

上目遣いで見上げてくるヒナタに内心、めちゃくちゃ可愛い!!と叫びながら、それを表には出さずにネジはニッコリと笑顔を浮かべる。
何処と無くいい雰囲気が流れた2人だったが、それは突然の乱入者達にめちゃくちゃにぶっ壊された。

「何見つめ合っていい雰囲気になってんだテメーは!!!」

「姉さんから離れろ今すぐ離れろ!!!」

「優勝すんのは俺だってばよ!!」

上から順に、キバ、ハナビ、ナルトである。
少し離れた場所に、サクラ、いの、シカマル、チョウジといった昨日のメンバーもいる。
ネジはあからさまにチッと舌打ちを零し、憮然とした態度で声の主達に視線を向けた。

「邪魔をするな騒々しい。」

「騒々しいとは何だ!!せっかく皆さんの応援のついでに、お前も応援してやろうと思って来たのに!!!」

「…おや、ハナビ様…いらしたんですか。…応援も何も、貴女も強制参加のはずでしょう。」

キバやナルトより頭一つ分程小さなハナビに気付かなかったネジは、ハナビに視線を向けて抑揚のない声でそう告げる。
するとハナビはフフンと笑って、ネジを見上げながら口を開いた。

「馬鹿を言うな、私がお笑いなんてする訳ないだろう。父上に言ったら、嫌ならばそんなものには出なくていいって言って、火影様にそう言ってくださったんだよ。」

「…何だ、結局ヒアシ様に泣き付いて免除してもらったんですか。貴女のお笑いネタなど、この先見る機会などないでしょうから楽しみにしていたんですが。」

「っっ泣き付いてないっ!!!」

呆れたようにネジがそう言うと、ハナビが眦を吊り上げて怒鳴り声を上げる。
だがすぐにハッと我に返って、ネジの相手などしてられないとばかりにヒナタの傍へと駆け寄った。

「そういう事だから姉さん、姉さんも嫌なら出なくていいんだよ?観客席で一緒に、皆さんのネタとネジの無様な姿を見ようよ!」

「え…?あ、わ、私、嫌じゃないよ?ちょ、ちょっと恥ずかしいけど…でも、綱手様がせっかく木の葉のみんなを元気付けようと企画なさったんだもの…!わ、私も、出来る事はしたいから…。」

いや、あの人絶対ただの暇潰しで企画したから。
頷いているチョウジ以外のメンバー全員が、心の中でそうツッコミを入れた。
だがキラキラと目を輝かせてそう意気込むヒナタに、そんなツッコミを入れる事はその場にいる全員には出来ない。
よってハナビはそっか…と呟き、しょんぼりと俯いた。

「あ…で、でも、ハナビは私を心配してくれたんだよね…?ありがとう…!私、ハナビのお姉ちゃんとして、ハナビが恥ずかしくならないようがんばるからね…!」

「…姉さん……うん!私、いっぱい応援するからがんばってね!」

しょんぼりしてしまったハナビの頭をヒナタが優しく撫でると、ハナビはパッと顔を輝かせて握り拳を作る。
何とも微笑ましい姉妹のやり取りにネジ以外のメンバーが胸を温かくしていると(ちなみに、ネジは面白くなさそうにムスリとしている)、いきなりステージ上にスポットライトが当てられ、その場に綱手が姿を現した。

「あ、始ま…、…?」

「あれ?」

「あの人達って…。」

「「「「「「え…えええっ!!?」」」」」」

チョウジ、ヒナタ、ハナビがポカンとする中、他6人がステージを見て驚きの声を上げる。
それもそのはず、綱手の後ろにはその場にそぐわないメンバーが立っていた。


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