捧げものC

□All is fair in love!
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見事な説得(?)によってクロウリーを仲間にしたアレンとラビは、別の任を請け負ったリンクと別れてミランダを探しに教団内を散策し始める。
だが談話室、食堂、訓練室など、思い当たる場所は全て探し回ったのだが、肝心のミランダがどこにもいない。
最後の望みとばかりに科学班フロアに来たアレン達は、そこで漸くミランダの居場所を知る事が出来た。

「ミランダ?ミランダなら、今さっき神田の見送りに行ったよ。丁度、神田に任務が入っちゃったからさ。」

ジョニーの証言を元に、アレン達は方舟のゲートがある部屋へと急いで向かっていく。

「……!しっ。」

その部屋の近くまで来た時、ラビがアレンとクロウリーを片手で制し、物陰へと隠れた。
2人も慌てて、ラビの後に続く。

「あ、あ、あの、神田君…気、気をつけてね…?」

3人が隠れた直後、すぐ先で意中の女性…ミランダの声が3人の耳に届いた。

「……大した任務じゃねぇのに、わざわざ見送りなんて大袈裟なんだよ。」

次いですぐに神田の声も聞こえてきて、3人はコソリと物陰から少しだけ身を乗り出す。
するとやはり方舟のゲートがある部屋の前に、ミランダと神田、そして今回一緒に任務に就くのであろう、リナリーとトクサの4人がいた。
ミランダは神田の言葉にシュンと項垂れ、申し訳なさそうに眉を寄せている。
そんなミランダの姿に、クロウリーはアレンが言っていた事はやはり本当だったのかと表情を曇らせた。
当のアレン、そしてラビといえば、わざわざ見送りに来てくれたミランダに対して冷たい対応をする神田に、ギリギリと歯軋りをしている。
そして、ルベリエから言い遣ったのだろうトクサも、射殺す勢いで神田の後頭部を睨み付けていた。

「ミランダ、神田は照れてるのよ。本当は見送りに来てもらえて喜んでるんだから、そんなにションボリしないで。」

そんな中、リナリーが困ったように笑ってミランダの肩をソッと撫でる。
途端神田は頬を染めて、横に並んでいるリナリーを睨み付けた。

「バッお前!余計な事言うんじゃねぇよ!!」

「あら、本当の事だもの。仏頂面してても、口元が嬉しそうににやついてるわよ?」

神田がそう怒鳴っても、リナリーは意に介さずクスクスと笑う。
ミランダがキョトンと顔を上げると、それと同時に大きな手がミランダの頭を優しく撫で付けた。

「…っ……1日、2日ぐらいで戻ってくる。」

そんな声が聞こえてきたかと思うと、すぐに自分の頭を撫でていた手が消え、神田の後ろ姿がミランダの視界に映る。
後ろから見えた耳は赤く染まっていて、ミランダは頬を染めて嬉しそうに笑った。

「ま、待ってるわね…!い、いってらっしゃい!気をつけて…!」

そんなミランダの声が聞こえたのだろう、神田は片手を上げてそれに応え、リナリーとトクサと共に部屋の中へと入っていく。
その普段の神田からは考えられない程の特別扱いに、クロウリーは先程確信した神田への疑惑が瞬く間に萎んでいくのを感じた。

「ほ、本当に、神田はミランダをボロボロにするつもりなのであるか…?」

クロウリーが問いかけながら振り返るも、アレンもラビもどんよりと暗い空気を醸し出していて返事がない。
再度クロウリーが問いかけようとすると、それより先にゲートの部屋の前から去ろうとするミランダが、3人に声をかけてきた。

「あら…?アレン君、ラビ君、クロウリーさん、こんにちは。こんなところでどうしたんですか?」

「……!」

「ミ、ミランダ…!」

「あ、えーっと…その…。」

クロウリーは戸惑いから、アレンとラビは先程の光景の衝撃から、ミランダが接近していた事に全く気付いておらず、話しかけられてビシリと固まってしまう。
だがさすがというか、(主に師であるクロスのおかげで)様々な衝撃に耐性のあるアレンはいち早く我に返り、それらしい答えを考えた。

「ぼ、僕達も見送りに来たんですけど、一足遅かったみたいです。ミランダも見送り…してたんですか?」

「えぇ、そうなの。その、任務は危険なものばかりだし、せめてお見送りだけでもって思って…。」

ポッと頬を染めてはにかむミランダはとても愛らしいのだが、それが神田を想って浮かべた表情だと思うといただけない。
アレンが笑顔の裏で苦虫を噛み潰した気分を味わっていると、オズオズとクロウリーが口を開いた。


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