捧げものC

□All is fair in love!
4ページ/14ページ



「アレン、ラビ!監査官も…みんな揃って、どうしたであるか?私に何か用事でも?」

ニコリと笑ってアレンがラビ達を引き連れて訪れたのは、黒の教団の良心であり、二大癒しの片割れであるクロウリーの自室だった。
ちなみに、もう片割れは勿論ミランダである。
ノックをしてすぐに顔を出したクロウリーは、アレンとラビの顔を見てパッと表情を輝かせる。
そして何処と無くそわそわしながら、アレンとラビを交互に見比べて問いかけた。
その問いかけと意外な人選に、ラビとリンクがチラリとアレンに視線を向ける。
2人共に、まさかクロウリーを仲間にするとは思っていなかったようだ。
そしてまた、この人の良すぎるクロウリーが、神田とミランダを別れさせるのに協力するとは思えなかった。
だがラビとリンクが訝しげな視線をよそに、アレンはニコリと笑ってクロウリーに事情を説明し始める。

「ええ、実はクロウリーに、手伝ってほしい事があって。」

「え?何であるか?私に出来る事なら、喜んで手伝うである!」

「本当ですか?…実は……ミランダから神田を引き離すのを、協力してほしいんですよ。」

その言葉に、クロウリーはニコニコ笑ったまま固まった。
今、彼はこんな爽やかな笑顔で何と言ったのだろうか。
クロウリーはヒクリと口元をひきつらせながら、それでも笑顔を浮かべてもう一度聞き返した。

「…え、えっと…今、何と…?」

「えぇ、ですから、ミランダから神田を引き離すのを、協力してほしいんです。」

一言一句違えず、アレンが同じ言葉を繰り返す。
途端クロウリーは表情を曇らせ、困ったように俯いてしまった。

「そ、それは、協力出来ないである…。ミランダも神田も、今とても幸せそうである……。アレンは何故、2人を引き離そうとするのだ…?」

シュンと項垂れながら、クロウリーが恐る恐る問いかける。
やっぱり断られたじゃないかと言わんばかりにラビとリンクがアレンを見ると、先程までの笑顔はどこへやら、アレンは悲しげな表情でクロウリーを見上げていた。

「僕だって、出来るならこんな事はしたくない…だけどこれは、ミランダの為なんです。」

「え?ミランダの為?」

アレンのセリフと悲しげな表情に、クロウリーが眉を顰めて顔を上げる。
するとアレンは、僅かに目に涙を浮かべながら言葉を続けた。

「クロウリーも、神田の口の悪さはよく知っているでしょう?今はまだ大丈夫ですけど…きっと近い内に、ミランダの事をボロクソに貶すと思うんですよね…。」

「え……。」

「しかもあいつ、他人になんかちっとも興味ないくせにミランダと付き合ったりして…もしかしたら、ミランダを利用するだけ利用して、使えなくなったらボロ雑巾のようにポイッと捨てるつもりなんじゃないかって、僕心配で…。」

「なっ…!?そ、それは本当であるか!!?」

アレンの言葉に激昂して、クロウリーが思わず大きな声を上げる。
アレンは密かにニッと口端を引き上げたが、すぐに悲しげな表情へと戻した。

「神田の性質上、有り得ない事じゃないですよ…。ミランダが身も心もボロボロにされるかも…って思うと…気が気じゃなくて…。」

そこまで言った途端、アレンの目からポロリと涙が零れ落ちる。
その涙にクロウリーはハッと息を飲み、拳を握り締めて決意した。

「そ、そんなミランダの一大事、私も黙ってなどいられないである!まさか神田が、そんな風に思っていたなんて…!!私も、協力するである!」

「!!ありがとうクロウリー!!」

アレンが涙を拭って、クロウリーの手を握り締める。

「…なぁ…これって、軽く詐偽なんじゃ…。」

「…彼の一番の天職は、詐欺師かもしれませんね…。」

そんな2人のやり取りを、ものすごくひきつった笑みと眼差しで、ラビとリンクは見守っていたのだった。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ