FF駄文

□It's really the calm after
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「…ヤキモチ…妬いてくれたんだな…。」

…ヤキモチ……?
その単語、ヤンから聞いた事がある。
カインをローザに取られて、悲しいって気持ちだってヤンは言ってた。
確かにローザに取られちゃったように感じたけど、悲しい気持ちよりも苦しい気持ちの方が大きい気がする。
これも、ヤキモチなの?

「わかんない…でも、カインがローザを抱き締めてたの見たら、すごい胸が苦しくなった…。」

わかんなくて素直に思った事を言ったら、またシーンと静かになっちゃって。
何だか居たたまれなくて膝を抱く手に力を入れたら、いきなり腕を引っ張られた。

「…!?ひゃっ…!!」

バランスを崩したあたしの顔に真っ白な何かが当たって、そのままあったかい何かに体を包まれる。
驚いて顔を上げたら、カインが困ったように笑ってあたしを見つめてた。
そこで漸く、何かの正体がわかる。
あたしの顔に当たった真っ白な何かはカインが着ているシャツで。
あたしの体を包むあったかい何かはカインの腕。
…あたし、カインに抱き締められてる……?
そう気付いた途端体が熱くなって、絶対赤くなってるって事がわかった。

「カ、カイン…!!?」

「全くお前は…困った奴だな…。」

あたふたしながらカインの名前を呼ぶと、カインがクックッって笑いながらあたしの頭を撫でてくる。
困った奴って……あたしが、ヤキモチ妬いたから?
でも、確かにそうだよね……あたしとカインはただの仲間なのに。
カインとローザが何してたって、文句言う資格なんかないもん。
何だか悲しくなってシュンと俯いた瞬間、ふわりとおでこにあったかくて柔らかい何かが触れた。
驚いてもう一回顔を上げると、照れくさそうに笑ったカインとバチリと目が合う。
い、今のって……。

「暫く、こんな気持ちは持たないと思ってたんだがな…。」

そう言って、カインは。
あたしのおでこに唇を押し当てた。
…おでこにキス、されちゃった…じゃあ、さっきのも…?
さっき触れた何かと同じ感触に、あたしはただただ瞬きを繰り返す。
そしたらカインはあたしを抱き締めてる腕にギュッと力を入れた。

「好きだ、リディア…。」

耳元で囁かれた言葉に、あたしは思い切り目を見開く。
今、好きだって言った…カインがあたしを、好きだって……!!
嬉しくて、嬉しくて。
あたしの目に涙が浮かぶ。

「それって、特別な好き…?」

「…特別じゃなきゃ、こんな事はしないさ。」

そう言って、カインが優しく笑うから。
浮かんだ涙が、ポロポロとあたしの頬を零れ落ちた。

「あたしも、あたしもカインが好き…!カインの事、大好きだよ…!!」

大きな声でそう言ったら、カインは頬っぺたを赤くして困ったように笑って。
それでも嬉しそうに笑って、あたしの涙を拭いてくれた。




後で聞いたんだけど…カインがローザを抱き締めたのは、ローザが段差につまづいて転けそうになったからなんだって。
いきなりだったから咄嗟に抱き寄せただけだって、はっきりあたしに言ってくれたんだ。
…だから、あたしの勘違いだったみたい……。
なのにあたしってばすごい勢いで走っていっちゃうし、追い付いたら大泣きしてるしで、カインすごく慌てたんだって。
うぅっ恥ずかしい……。
…でも、そのおかげでカインの気持ちも知れたし、こうしてくっついてもおかしくない関係になれたから逆によかったのかも。
あたしはカインの胸にスリスリしながら、勘違いもたまにはいいんだな…なんて思ったのだった。


          Fin


小ネタのつもりで書いたのに、思いの外長くなっちゃったのでこちらに収納。
バレンタイン話のリディアがあまりに悲しくて泣ける…とコメントをいただいたんで、ちょっと幸せリディアを書こう!と思ったんですが…;;
小ネタにしては長く、普通の話やと短い代物に;;
こんなんですが、楽しんでいただけたら幸いです!
ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました^^


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