FF駄文
□4月ネタ
1ページ/2ページ
春らしい日射しが降り注ぐ穏やかなある日。
カインは聞こえたセリフが信じられなくて、瞬きを繰り返して目の前の2人に問いかけた。
「………今、何て言った…?」
呆けたようにそう問うカインに、目の前の2人…リディアはにこにこと邪気のない笑顔を浮かべ、エッジは勝ち誇ったように口端を引き上げる。
そしてリディアがピタリとエッジに寄り添い、カインが問いかけた言葉に答えた。
「うんとね、あたし達、ケッコンする事にしたの!」
ニコニコ笑ってそう言うリディアに、聞き間違いではなかったと理解したカインの頭に、鈍器で殴られたような衝撃が走る。
…いつの間に、そんな事になったんだろう。
確か昨日までは2人共普通で、リディアに至っては自分への好意を隠しもせずに過ごしていたはずだ。
それが何故、今日になってエッジと結婚する事に…?
言葉を無くして立ち尽くすカインの顔を、エッジがニヤニヤ笑いながら覗き込んでくる。
カインはバツが悪そうにエッジから顔を背け、ギリッと唇を噛み締めた。
「おーい、聞こえてっかカイン?まぁまだ日取りは決めてねーけどよ、式には是非出席してくれよな!」
「……………。」
エッジの弾んだ声が、カインの胸に深く突き刺さる。
ずっと自分を好きだと言ってくれていたリディア。
だがいつまでもハッキリしない自分に、愛想を尽かしてしまったのか。
ローザへの想いを引きずっていたわけではないのだが、ローザを諦めてすぐリディア…という軽い行動をとりたくなくて。
ゆっくりと、だが着実にリディアへの想いを育てていき、いつか時期が来たらその想いを打ち明けようと思っていたのに。
まさかこんな結末が待っているとは、思いもしなかった。
「どうしたんだい?3人で。」
「何の話をしているの?」
どんな言葉を口にしていいのかわからず未だ立ち尽くすカインの背後から、天の助けとばかりに幼なじみ2人が現れた。
カインはホッと息を吐き、情けないがリディア命の親バカ2人が何か言ってくれるんじゃないかと期待して振り返る。
そしてカインが信じがたい事実を話そうとした時、それより早くリディアが2人に駆け寄って口を開いた。
「あっ!セシル、ローザ!あのね、あたしとエッジ、ケッコンする事にしたの!」
「「……………。」」
唐突なリディアの言葉に、カイン同様2人も固まってしまう。
だがすぐに顔を見合わせて、2人は満面の笑顔を浮かべた。
「まぁ、そうなの!それはとてもおめでたい事ね!」
「少し寂しいけど…幸せにしてもらうんだよ、リディア。」
「なっ…!?」
「うん!」
2人の信じがたい言葉に、カインは更に目を見開いて固まってしまう。
まさか、この2人があっさりと了承してしまうとは思ってもみなかったのだ。
…最早止める事は出来ないのか。
そう思った途端カインは自身の心に、ある感情が沸き上がるのを感じ取った。
「………嫌だ。」
大団円な雰囲気の中、その場にそぐわない声音でカインが呟く。
4人はキョトンと目を瞬かせ、カインの方へと振り返った。
「…カイン?」
「いきなりそう言われて、はいそうですかと納得できるか!リディアお前…エッジを好きになったのか?」
リディアがカインの名を呼ぶと、カインが眉を寄せて苦しそうにそう問いかける。
リディアはパチパチと瞬きを繰り返すと、バツが悪そうに頬を掻いた。
「え、えっと、あのねカイン…実は…」
「おぉそういうこった!なぁリディア!っつーわけでリディアよ、ここに判子押して、誓いのキスといこーじゃねーか!」
リディアが何か言うより先に、エッジが何かの紙を懐から取り出し、リディアの体を強く引き寄せる。
そのエッジの行動に、同意していたセシルとローザがギョッと目を見開いた。
「えっ…!!?」
「ちょ、ちょっとエッジ!!?」
「は、判子って…あたし判子なんて持ってないよ?それに、キスは特別な人とだけしなさいってローザが…」
「判子がねーなら後でサインでいいか!ほらリディア、上向けって!」
慌てる2人と困ったように首を傾げるリディアを無視して、エッジが強引に事を進めようとする。
やむを得ないかと、セシルとローザは各々武器を手にした。
「話が違…」
「いい加減に…」
ガッ!!
だが2人が手を出すより先に、エッジの体が後ろに傾く。
.