FF駄文

□It's really the calm after
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それを見た瞬間、頭の中が真っ白になった。
人通りの少ない路地裏で、後ろから覆い被さるようにローザを抱き締めていたカイン。
……やっぱり、まだカインはローザの事を……。
ズキズキ胸が痛くなって、その場に立っていられなくて。
あたしは慌てて、その場から走り去った。
ボロボロ零れ落ちる涙を拭いながら。



It's really the calm after



街を抜け出したあたしは、近くの小川まで走ってきていた。
小川の側に辿り着くと、ぺたりとその場に座り込む。
ずっと前から知っていた事なのに、それでもあの光景にすごくショックを受けて。
あたしは膝を抱えて、そこに顔を埋めた。

「うっ…ひっく…カイン…。」

ローザはとっても綺麗でスタイルも良くて、優しくて…誰がどう見ても理想の女性で。
そんなローザに敵うはずがないってわかってるんだ。
でも、あたしはどうしてもカインが好きで。
特別な好きをカインに抱いたんだって気付いた時は、本当に嬉しかった。
…カインが、ローザに想いを寄せているって気付くまでは。

「……こんなに苦しいなら…こんな気持ち、気付かなきゃよかった…!」

「………リディア…?」

苦しい気持ちを吐き出すように小さくそう叫んだら、大好きな、だけど今は聞きたくない声があたしの頭の上から聞こえてきた。
驚いたあたしは、泣いていた事も忘れて思わず顔を上げてしまう。
すると顔を上げたあたしと目が合って、カインは驚いたように目を見開いていた。

「カ、カイン……!!」

「…!?どうした!?何で泣いてるんだ!?何かあったのか!?」

あたしが泣いていた事に気付いて、カインがあたしの顔や体を確認するように覗き混む。
あたしも自分が泣いていた事を思い出して、慌ててまた膝に顔を埋めた。

「な、何で…何でカインがここにいるの…!?」

泣いたら少しはスッキリするだろうから、それからみんなの所に戻ったらいつもみたいに振る舞えるって思ってたのに。
どうしてこんなタイミングで、来ちゃうの…!?
顔を隠したから、カインの表情はわからない。
でもカインが、どこかホッとしたように息を零したのがわかった。

「街で、お前が走っていくのを見かけたんだ……その様子がただ事じゃなかったから……。」

…あたしを心配して、追いかけてきてくれたんだ…。
それはすごく嬉しかったのにさっきの光景が頭に浮かんで、あたしは顔を上げれなくて。
あたしの口から思いがけず、低い声が飛び出した。

「…ローザはよかったの?」

こんな事が聞きたいわけじゃないのに、とげとげした気持ちが消えなくて。
そう問いかけた途端、カインの体が固まったのがわかった。
せっかく追いかけてきてくれたのに、どうしてこんな事言っちゃったんだろう…。
後悔しても零れた言葉は取り消せなくて。
気まずい沈黙が辺りを包んだ。

「…さっき…見てたのか…。」

ポツリと呟くカインの言葉に、今度はあたしの体がビクリと強張る。
否定する事も頷く事も出来なくて、顔を埋めたまま黙りこんだあたしの耳に、もう一回カインがため息を吐いたのが聞こえた。
さっきの安心したようなのじゃなくて、怒ってるような…呆れてるようなそんなため息。
あたしは恐くて、顔を上げる事が出来なかった。


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