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□らしく?
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「絶ってぇヤダ!」


そう言うのは、少年っぽい少女。名はシオンと言い、彼女が騒ぐ理由とは…。

「良いじゃない。少し位、女の子らしくするの」
「ああ。十分似合うぞ」

そう言うのは、幼馴染みであるマリカとジェイル。
二人はシオンの少女らしい格好をした所を見た事が無く、寧ろ見てみたいと言うのが多かった。

「それに、罰ゲームも兼ねてるんだし。ね?」
「う…」

ちなみに罰ゲームとは先程のトランプ遊びでの事で、見事シオンがビリとなってしまったのだ。


取り敢えず着替え終わり、シオンが出て来た。

「シオン、結構可愛いじゃない。ね、ジェイル」
「ああ、似合っている」

二人はそう言うが、シオンはムスッとしていた。
何しろ、ワンピースを着た事の無いシオンにとって拷問に近い。
ただ、それだけでは終わらない事をシオンは悟っていた。

「‥‥‥‥なぁ、今度は何すんだよ?」
「そうだな、村一周と言うのはどうだ?」
「それ良い!決定ね!!」(やっぱな。嫌な予感はしてたんだけどな…)

シオンはそう心の奧で呟くと、溜め息を吐いた。


(‥‥‥‥視線、完璧うざってぇ…)

ただ今罰ゲーム中の注意札を着けられたシオンを見る村の人々は苦笑等が多く、珍しい物を見る様な感じだった。シオンは余計ムスッとした顔になり、何が面白くて見てるのかすら疑いたくなる。(後ろでは、途中で着替えないか監視中)
村の入り口付近に行くと、一人の少年が居た。
村の人間では無いのは一目瞭然で、村の外に出た事の無いシオンは興味津々に近付いた。少年もシオンに気付いたらしく、寧ろ札をぶら下げて来るのには目立ち過ぎだとも思った。

「なあ、お前何処から来たんだ?」
「何処からって…。遠くからかなー?」
「へぇ…。ってか、そうに見えねぇけどなぁ…」

シオンはそう言って少年を見ると、肌は白く強そうにも見えない姿にもっと珍しがった。

「名前、何て言うんだ?俺はシオン。お前は?」
「オレ?オレはリウ」

リウと名乗った少年は、自分をじっと見るシオンが気になっていた。

「な、何?」
「綺麗な翠色だなーって」

シオンがそう言っているのは、リウの瞳の色だった。リウからしてみれば、覗き込んでいる銀の瞳が綺麗だなと思っていた。

「あ、そうだ。村の中、案内してやるよ!皆優しいしさ!!」

そう言って笑みを浮かべるシオンに、リウは苦笑しながら聞いた。

「オレ、余所から来たんだぞ?良いのか??」
「良いって。俺だって、半分そうだし」

リウはえっ?と思うと、村の中を案内しながらシオンは話した。

「俺さ、赤ん坊の時に拾われたんだ。その時拾ってくれたのが、もう居ねぇけどここの村長の奥さんでさ。何処の子供かも分からねぇのに、自分の子供みてぇに育ててくれた。村の皆だって、俺の事をそう思ってくれてる。‥‥‥‥ここが、村長ん家。あっちが溜まり場で、俺結構あっちで寝るのが好き」

シオンはそう言うと、リウはシオンの説明よりも自分の事をそう言える事に凄いと思っていた。

「シオンさ、何でそう言えるんだ?」
「何でって…。まっ、村全体が俺ん家みたいな感じだしな!」

そう言って笑顔になるのを見て、リウはついシオンの笑顔に見惚れてしまった。自分には無い強さ、それ以上に見え隠れする少女らしいそれにリウは一瞬ドキッとなった。

「そう言や、リウって何で一人何だ?何かアテでもあるのか?」
「ねーけどさ。家出みてーな感じかな?」
「へぇ…。んじゃさ、ここに居れば良いじゃんか!」「へ?」
「だから、村の子になれば良いじゃんって言ってるんだって!」
「あのさ、絶ってー無理だと思うぞ?いきなり余所から来て、村に居させて下さい何て言われてさ…」
「もし反対されたなら、俺も家出する。何か楽しそうだしな!」

とんでもない事を平気で言うシオンに、リウはあんぐりとした。

(それ、平気で言う!?)

心の中で突っ込んだリウに対し、シオンがリウの手を握って言った。

「リウ、俺も頼んでみるからさ」
「でも…」
「やってみなきゃ、分からねぇだろ?」

な?とシオンはそう言ってリウの手を引くと、リウはそんなシオンの暖かさと長い付き合いになりそうな予感を胸に引かれて行った。

(‥‥‥‥ま、いーか…。けど、シオンって怖い物知らずだよなー。でも…)

――――太陽みたいなお転婆娘に惚れました――――

その呟きは心の中で。リウは何時かシオンにそう言おうと思いながら、その横顔を見ていた。




シオンの必死(?)の説得もあって、リウも無事村の一員になりました。
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