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□怪我の治療。
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「痛ってぇ〜っ!」
料理当番で珍しく包丁で怪我をしてしまったロイドは落ち着きながら、その指の傷を見てみた。
(あっちゃー、やっちまったよ。でも、俺がこんな事するのって久々だよなぁ。‥‥‥‥あーでも、マジで痛てぇしな…)
「ロイド、お前は一体何をしてるんだ…」
溜め息混じりに言った言葉を聞いたロイドは後ろを向くと、呆れ顔のクラトスが腕組みをしながらロイドを見ていた。
「べっ、別に何でもねぇ。‥‥‥‥ちょっと、ドジっちまったけどな」
「お前がか?珍しい事もあるんだな」
「うっ、うっせーよ…」
「‥‥‥‥で、どう言うドジをしたんだ?」
クラトスは呆れながらも、心配しながらロイドに言った。ロイドは渋々怪我をした指をクラトスに見せながら言った。
「これこれ、さっき包丁で切っちまったんだ。な、ドジだろ?」
「‥‥‥‥全く…。貸してみろ」
「えっ?あ、ああ」
ロイドは少しキョトンとしながらもクラトスに怪我をした指を見せた。
(ファーストエイドでも掛けてくれるのかな?)
クラトスはその指の怪我を見て、眉間に皺を寄せながらロイドに思い掛け無い事を言った。
「痛かっただろう…」
「い、痛てぇのは普通じゃねぇか。これが痛くなかったら絶対変だぞ…」
ロイドは少し痛さを我慢しながらも言った。
そしてもう一度クラトスを見てギョッとした。
クラトスは傷を痛々そうに見た後、ロイドの指を口に咥わえていた。
「ク、クラトス!何やってんだよ!?」
「治療だ。それ以外に何があると言うのだ?」
「だ、だからってコレはねぇだろうよ!」
ロイドは恥ずかしさで顔を真っ赤にさせながらそう言うと、クラトスはそんなロイドの可愛さに少し笑みを浮かべ傷に舌を押し付ける様に舐め上げた。するとロイドの口から思い掛けない声が出された。
「んっ‥‥ゃっ…」
ロイドは思わず自分のその声に驚き、空いている手で口を塞いだ。クラトスはロイドのその声が気に入ったのか、同じ事をもう一度する。
「やっ、クラトス…っ。駄目…」
嫌々と言う様に首を横に振りながら言うと、クラトスはロイドの指をゆっくりと開放する。
指を離され、くたりと座り落ちるロイドの身体をクラトスが抱き止めるとロイドは少し涙目になりながら口を開いた。
「な、何するんだよ!いきなり!!」
「すまない…。だがもう痛くは無いだろう?」
「それは、そうだけどさ。‥‥‥‥変かな、俺…」
ロイドはそう呟くと首を横に振り、何時もの様に言った。
「ウダウダ考えても仕方ねぇか。再開するか」
「ロイド、何なら私も手伝おうか?」
「えっ?良いのか??」
「ああ。‥‥‥‥余計なお世話か?」
「‥‥‥‥サンキュ、クラトス」
ロイドは少し照れながら言うと、気を取り直す様に料理を再開させた。
‥‥‥‥少しだけ、クラトスを気にしながらだった事だけが、見ている方側には危なし気だったとか…。