長編

□『運命』第五章
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日曜日の今日朝から雨。
ザーッと雨が降り続ける空を部屋からじっと不快そうに見つめる蓮。


「‥鬱陶しい雨だ」

そう呟くとパラッと本のページをめくる。
気付くと残りも数ページ程になっていた。


「あれからもう三週間か‥一体何回読んでいるのだ‥」

そう愚痴るのには、ホロホロは学校が終わるとアルバイトに直行というのがほとんど。
帰ってくるのは何時も11時過ぎ。

アルバイトがない日はない日で制服のまま友達とどこか遊びに行って結局帰ってくるのは早くて9時前。

いずれにしても8時には寝てしまう蓮にとっては朝の会話以外一日中一人。
だから本を読むぐらいしかやることが無かった。

そのせいか、1日で分厚い本を読み終えてしまったのであった。
授業中居眠りか漫画を読んでるホロホロとは正反対の凄い集中力だ。

アルバイト三昧のホロホロを見てると気がひけてなかなか『本を買え』と言えず、
仕方なく毎日同じ本を読むはめになってしまったのだった。

だが、流石にもう限界だった。


「そろそろ言っても良いか‥」

深紅色の表紙の本をバタンと閉じるとソファーから立ち上がった。

冷蔵庫に歩み寄りガチャッとドアを開けガラスコップに牛乳を入れるとゴクッと一気に飲み干した。


「それにしても暇だ‥」

はぁ‥と溜め息をし、何気なしにソファに再び座るとテレビのリモコンを手にとりスイッチを押す。

しかし、殆どがバラエティー番組であった。
バラエティーなどまったくもって苦手な蓮。


「まったくもってこんなもの面白くもない‥」

テレビの電源を消し本を退かすと寝転がった。


「‥」

暫く沈黙しやる事が無いと判断すると蓮は仕方無しに目を瞑りそのまま眠りに入っていった。





『‥ゴロ』

外から鳴る不気味な音に蓮は目を覚ました。


『ゴロゴロ‥』

『‥!』

ピクッと耳をたてソファから起き上がり窓に歩みよる。
空を見上げようとしたその時だった。


『ピシャ─!!』

とてつもなくでかい光の塊が空一面に光った。
蓮の金色の瞳に鋭いフラッシュ線が映される。


『ッツ!!』

突然忘れようとした記憶が光と共にフラッシュバックとなって呼び起こされた。


<<ん‥蓮‥>>

『うっ‥あっ‥』

蓮の身体はガタガタと震え何かから逃げるように窓から離れていく。


「止めろ‥止めろ‥」

蓮の目尻から一筋の透明な線が流れ落ちた。


『ピシャ────!!』

『あぁあああああ!!』

蓮の声は雷で打ち消された。





































『ピシャ────!!』

「ウオォ!?今の凄ェ音だったなホロホロ!!」

ホロホロのアルバイト先のコンビニの窓から見える巨大な光。
ホロホロのバイト仲間のチョコラブが唖然にとられる。

「バァカ。口動かしてる暇があったら掃除続けろっつの」

ホロホロが呆れながら商品のおにぎりを並べていく。


‥そういや蓮って‥



『ピシャ──!!』

『・・っやべェ!!チョコラブ!悪ィけどオレ帰るわ!!』

店の黄色のエプロンをチョコラブに投げるとコンビニを出ていった。

「ちょっ‥オイ!!‥後で店長に怒られるのオレなんだぞ‥」

ホロホロにはその声は届かなかった。












































『‥ハァ‥ハァ‥』

傘をささずにマンションに向かって走り続けるホロホロ。


オレの記憶が間違っていなかったら

目を覚ましたあの時

蓮‥雷の音を聴いた途端何かから怯えてたよな

だとしたら今頃‥
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