長編

□『運命』第四章
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今日は蓮がオレん家に住み始めてからまだ2日目。

当たり前だが、関係は昨日と同じ同居人。

オレ的にはこう‥何だ?

友達になりたい?と言うのか?

よく分かんねェな


蓮が来てからはすっかり寝る場所を奪われたオレは、
一人暮らしにいるだろうとオヤジがくれた実家にあった白いソファーに寝ている。

オレん家をゴミ捨て場にしてるのか?

どうせ新しいソファーでも買うつもりだろあのクソオヤジが。


目を覚ますと、ソファーのついでにくれたテーブルとイスの所に蓮が座って本を読んでいた。

っつうかテーブルとイスも買い換える気かあのオヤジ。

蓮が読んでいる本は蓮の暇つぶしにとオレが昨日買った本で、
表紙が深紅色の頭堅そうな分厚い本。

結構高かったんだよな―コレ。
値段見てマジで吹いたもんな。

図書券に感謝。


っていうかそんな頭が痛くなるような本買ってまで読む奴いるのかよ。

って蓮に昨日本を買う時に言ったら

『キサマはバカか?ココにいるではないか。』

と素に言われた。


って買うのはオレだろうが!!

絶対何時か泣かす!!



‥まぁ読んでくれてんならそれで良いけどよ

蓮を見ていたらダチの葉が言ってた『読書をする猫』と蓮がオレの脳裏でかぶって思わず笑いかけた。



「よぉ蓮!良く眠れたか?」

朝から元気な声を出すと蓮の隣に座って顔を覗きこんだ。

「‥」

ホロホロの五月蝿い声が耳に入らない程本に集中してるのか、眉一つ動かない。

(シカトかよ!ってゆうかもしかして気づいてない‥?)

それなら

「ぬぉッ!?」

ホロホロはフサフサ揺れていた黒紫の蓮の尻尾を思いっきり引っ張った。

「蓮オハヨッv」


笑顔いっぱいのホロホロ。

「‥キサマぁ〜‥」

そのホロホロとは対称的に読書を邪魔されトサカをビンビンに立てマジギレ数秒前の蓮。


「ご‥ゴメンなさい‥」


ガタガタと震え怯えるホロホロ。


「ゆ‥許さん‥!!」

本を投げると蓮はホロホロを押し倒した。
ホロホロの頭が床にぶつかると鈍い音が床に響いた。

痛みに目に涙を溜めるホロホロに追い討ちをかけるように、
蓮は猫ごとく爪でホロホロの顔をガリガリと引っかいた。


「イッテ───!」

人間の爪なのだが気持ち的に痛くて叫び声を上げた。

痛みに悶えるホロホロに満足気の蓮。


「フン‥キサマが悪いのだ。それよりホロホロ良いのか?」

「はっ?」

蓮の指差す方を見ると、もう家を出る時間であった。

「ヤベェ!オレまだ制服着替えてねェよ!」


ドタバタと走り顔を洗ったり歯磨きをしたりと慌てるホロホロ。

蓮はざまぁみろと言わんばかりに鼻で笑うと再び本を読み始めた。

再び本に集中しかけた所に着替え終わったのか勢いよく寝室から出たホロホロは


「蓮!わりぃけど朝ご飯適当にすましてくれ!!」

「なっ‥!?」

と言うと本を落とし呆然とする蓮を置いて出ていった。


「あのバカめ!家帰ったら覚えていろ!!」

顔を引っ掻いた仕返しにされたと思った蓮はトンガリをビンビンたてイスに座ろうとしたその時、
床におちてた手帳が目に入った。


「これはホロホロの‥」

拾いあげると生徒手帳のようだった。

パラパラと何気なくめくると目に入ったのは名前や血液型が汚い字で書いてあったページ。


「生誕‥1985年‥11月27日‥」

11月27日‥


「今日ではないか‥」

カレンダーを見て小さく呟くと自分には関係ないとカレンダーから視線を外すと、ホロホロが寝ていたソファーに座った。

まだ温かい‥

ゴロンとソファーに寝転がるとホロホロの温もりが伝わって眠気を誘われた。

目を虚ろ虚ろに再びカレンダーを見る。


フン‥オレには関係ない




<<ピンポーン>>


インターホンの音が静かな部屋に響いた。


「なっ‥!?」

こんな朝早くから人が来るなど思ってもいなかった蓮はソファーから起き上がると頭がパニックになった。
しかもホロホロが出かけたばかりだというのに。


<<ガチャ‥>>


慌てる蓮を追い詰めるようにドアが開いた。

鍵を掛けとけば良かったと蓮は思いながら必死に隠れる場所を探した。

目に入ったのは浴槽。


「チッ‥仕方ない‥!」

蓮は湯が入っていない浴槽に入り隠れた。


「誰もいないの・・?」

中まで入ってきたのは女と思われる声。
蓮は早く帰ってくれと息を殺しながら静かに耐える。


「あれ‥浴槽開いてる‥しかも変なトサカが‥」

(く‥来る‥!)

もう駄目だと思った。
ゆっくりと足音は近づき


「誰かいる‥の?」

女は意外な動物‥いや人物がいて驚いた。


蓮と女はお互い目をそらさず見つめあう。

その女‥女の子の髪色はホロホロと同じ水色の髪色をしていた。


「何これ!?可愛いぃ〜!!」

ぎゅっと抱きしめられる蓮。
思わず顔が赤くなる。
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