長編

□『運命』第二章
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頭にトンガリが生えた猫耳と尻尾のある少年がホロホロの家に来てから一週間が経った。

少年は目を覚ましはしなかったものの、熱も平熱になり、
体中にあった無数の傷もだいぶ癒えてきた。

この約一週間ずっと学校休んで看病したかいはあった。

普通は病院というのが一般だが、もし連れて行けば少年の容姿からそれこそ大変だ。


学校には風邪とか腹痛で理由をこじつけて休んだ。
ダチには『サボリだ』と不安にさせないように嘘を言った。


「それにしても‥今日の天気は薄気味悪ィな‥」

ホロホロが少年の傷口を手当てしながら窓を見ると、向こうのほうで雷が『ゴロゴロ・・』と鳴り響いていた。


近くに落ちるかもな



『んっ‥』

少年の可愛らしい黒耳がピクッと動いた。


『あっ‥』

ホロホロは反射的に少年の顔を見た。

少年の瞼がゆっくり開き、その金色の瞳がとても綺麗で一瞬で吸い込まれた。

妖艶な瞳に心臓が踊らされる。


「えっ‥あっ‥その‥おめェ‥大丈夫か‥?」


『ゴロゴロ・・!!』


雷の音が鳴る。

それは遠くから、でも先程より大きい音。


『あっ‥!!』

少年は体を震わせた。
何かに怯えるように。



『ピシャ───!!!』


『来るな‥来るなあぁああああ!!』

雷が大きく鳴り響いたと同時に少年は涙で頬を濡らし、喘ぎ声のような叫び声を上げ始めた。

顔を両手で隠し目の前から背けているように見えた。


「どうしたんだよ‥!?なァ!落ち着けって!!」

ホロホロは少年の肩を掴み兎に角落ち着かそうとするのに精一杯だった。


「来るな‥嫌だ‥止めろ‥」

少年は手を震わせホロホロに抱きついた。
体が震えている。

その時自分は何を考えていたのだろうか。


「ん‥」


柔らかい唇の感触が意識を混乱させ一瞬幻覚だと思った。

でも確かにそれは少年の唇だった。

何故やったのか自分自身判らない。
ただ分かるのは少年の瞳に心惹かれてしまったことだけ。



やがて雷は鳴り響くのを止めた。

雷が鳴り終わり、少年とホロホロはお互い顔を赤らめながら唇を離した。

「ッ‥わりぃ‥」

ホロホロは少年がどんな顔で自分を見ているのか怖くて無意識に視線を落とす。


「オレもすまなかった‥」

少年もまたどんな顔で見れば良いのか分からずホロホロと同じく視線を落としていた。


しばしの沈黙。


「おい‥キサマ‥名は何という‥?」

「えっ‥?」

ホロホロがハッと少年の顔を見ると少年は相変わらず下を向いていた。


「ウスイ‥碓氷ホロケウ‥ホロホロだ‥」

「オレはレン‥蓮だ‥」

少年はゆっくりと顔を上げた。
妖艶な瞳にまた心が引き寄せられる。


「あっ‥蓮‥宜しくな‥」

ホロホロは静かに微笑んだ。

その優しげな瞳に蓮は引き寄せられた気がした。





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