アビス小説
□九死の先に
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そういえば以前にも同じ様な事がありましたっけ。
ウトウトとしながら回想に耽る。
そう、あれはネビリム先生を殺した日より少し前の事ー…
「ジェイド〜危ないよぉ…やめなよぅ…」
「煩い。嫌なら付いて来なければ良いんだ。僕はこの譜術を会得したいだけなんだから…サフィールこそ魔物に喰われても知らないよ。さぁ、お帰りはアチラ」
「ジェイドぉ〜…」
僕は雪山へと歩みを進めた。
後ろではサフィールが怖じ気づいて立ちすくんで僕を見てる。
そう。僕は魔物を実験台に譜術を完成させようと、その巣窟へと足を向けている。
あと少しで完成するんだ。
誰にも邪魔はさせない。
この時、僕は慢心していた。
だからあんな相手に出会した。
ロニールで最も強い魔物、ビッグフット。
相手に不足は無い。
魔物はこちらの存在に気付き、突進してきた。
僕は簡単な譜術を唱えた。
「炸裂する力よ…エナジーブラスト!!」
音素が魔物に集中し、弾けた。
無防備な急所へ譜術は炸裂し、魔物は体を大きく反らした。
今ならあの術を使える…!
僕はすかさず実験段階の譜術の詠唱へと入った。
「焔帝の怒りを受けよ…」
譜を紡ぐ度に自身へと第五音素が寄せ集められてゆく。
フォンスロットへ第五音素が充満するのを感じとり、僕は最後の譜を口にした。
「吹きすさべ業火!フレアトーネード!!」
突き出した腕から第五音素が迸る。
魔物は第五音素の嵐に巻き上げられ、その身を焦がした。