緋語り

□Mein Stolz
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 ボクは王子に流されないよう、ふるりと頭を振って、深呼吸を繰り返す。


「王子。ボクは…」
「認めんぞ!!」


 まだ ボクが何も言わない内に王子は、そう言って その場に胡座で座りこんだ。


「わしから離れる、なんて話なら認めん」
「王子……」


 ボクから顔を背けて 王子は 認めんと再び呟いた。


「ミートが わしを見つけてくれなんだら、今のわしは居ない。きっと、独りドジ超人で終わっとった。ミートが見つけてくれて、テリーやロビンたちと分かり合え、友になれたんじゃ」


 小さく囁くような王子の言葉は、それでも ボクに届く。


「ミート、覚えておるか?わしは"お前は弟のようだ"と言った!!お前はわしに"ボクが傍にいます"と言ったぞ!!」

「………覚えてます」

「なのに、わしとキン肉星に行かんのは何故じゃ?」


 抑える気も隠すつもりもないらしく、王子の瞳から大粒の涙が とめどなく零れる。

 王子の気持ちが嬉しくて、ボクは座っている王子の首に抱きついた。


「ごめんなさい、王子。もうボクは決めたんです」


 ボクが王子の耳元で、変わらぬ決意を口にすると、王子の肩がぴくりと震えた。

 
「ボクは明日、王子を見送ったら ここで 来るかもしれない脅威に備え、次期正義超人たちの為、超人保存装置に入ります」


 ボクが決意を言いきると、王子はボクを力いっぱい抱きしめて 王位に付く人とは思えないほど大泣きした。


「ミートでなくともよいではないか!?」
「ボクがそうしたいんです」


 ボクを抱きしめる王子の腕を緩め、ボクは王子と視線を合わせ 微笑んだ。


「もしも王子に出逢わなければ、ボクは ここまでしなかったと思います。ボクは王子が勝ち得た平和を少しでも長く保ちたい。だって、王子はボクの一番好きな兄さんで、ボクの一番の誇りなんですから」


 ボクの小さな手のひらで、王子の大粒の涙を拭う。


「だから、ボクは王子から少し離れます。王子のお子が ボクを目覚めさせるまで…」

 わしの子とは限らんではないか、と拗ねながらも 王子はボクの決意を認めてくれて、王子と2人その場で 朝まで思い出話に花を咲かせた。




 ボクが王子のお子 U世に出逢うまで、少しサヨナラ。ボクの自慢の王子…。



 完
2010,06,10 

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