緋語り
□『Bの悲劇』
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長い廊下を崩れた壁などを避けながら進んでいく。
暫くして、ジャクリーンは人の気配のする部屋の前で立ち止まった。
「夜分遅くに失礼します。レジェンド、ブロッケンJr.」
部屋の扉は開けず、部屋の中にいるであろう人物にジャクリーンは話しかける。
「…入ったらどうだ?」
人が動く気配と共に部屋の中から、低い男の声が流れた。
ジャクリーンはゆっくりと扉を開け、中にいた人物―ブロッケンJr.に頭を下げた。
ブロッケンは手に持っていた酒瓶を一気にあおると、顎を使い、自分の向かいに在るソファーへとジャクリーンに勧めた。
失礼します―と声を掛けてから、勧められたソファーに座ると目の前のブロッケンに真っ直ぐ視線を向けた。
「こんな年寄りに何のようだい、お嬢ちゃん?」
ブロッケンは、ジャクリーンを見ようとせず、酒を呑み続けている。
「教えて頂きたい事がありますの」
ジャクリーンがにこりと微笑みを浮かべ、教えを乞うもブロッケンJr.は鼻で笑うだった。
「訪ねる相手が違ってるな」
「…と申しますと?」
ブロッケンの答えにジャクリーンが先を促すと、ブロッケンは分かっているだろうとジャクリーンを見据えた。
「教えを乞うなら、ロビンマスクかテリーマンの方が適任だ」
ブロッケンは言い終えるとまた、酒瓶を傾け、用が済んだとジャクリーンに出ていくよう、片手を振った。