天網恢々
□紅之館 第六章
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「落ち着け。その話は後で聞く。今は春子の様子を見てやってくれ」
「でも!」
「秋子…終わった事を今どうこう言っても仕方が無いだろう?憤りは解るが、今は春子の手当てと今後の打開策を見付ける方が先決だ」
「解り…ました。すみません、少し取り乱してしまいました」
少し?
安藤を今にも殺しそうな勢いだったぞ。
秋子は不服そうながらも身を引き、春子の手当てに戻ってくれた。
私の後ろにいる安藤から溜め息が漏れる。
それに振り向き、安藤を睨み付ける。
ビクリと安藤の肩が震えた。
「ああは言ったが、軽率な行動をした事を許すとは言っていないぞ?反省しろ」
「…はい」
私が怒っているのが伝わったのだろう。
安藤は消え入りそうな声で返事をし、うなだれた。
「次は誰が話してくれるんだ?」
まだアリバイを話していない者達を見、促すとまずヒロナが口を開いた。
「うちは朝ご飯食べた後直ぐに由利と部屋に戻って鍵掛けたんや。ほんで携帯でボリューム最大にして音楽聞いとった。少しでも気ぃ紛らわせたかったから…。部屋に閉じこもってる時は、うちも由利も一言も会話せんかった。ほんでそうこうしてる内に知らん間寝ててん。したら扉がドンドンうるさく叩かれる音で目ぇ覚めて、ここに来るようそこのおっちゃんに言われたんや」