天網恢々
□紅之館 第五章
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厨房内は水を打ったかのように静まり返る。
ややしてその沈黙を破る。
「証拠はあるのか?私と操が共謀して殺人事件を起こしたという証拠が。それにもとより私達は樋口夫婦とは初対面だ」
「…無差別殺人だとしたらどうですか?」
次は純平が震える声で問うた。
「いや…よく解らないが、こいつは無差別ではなく計画的なものに思える」
「確かに計画的に感じるよね…。それに、皐月っちとミサちゃんは人を殺すような人じゃないよ」
誠二がポツリと呟き、夏子がそれに便乗した。
そして二人によって重たい雰囲気は取り払われ、変わりに気まずい雰囲気が流れた。
「それでも!殺人鬼かもしれない人達と一緒にいるのは嫌よ!」
「そう…ねぇ。一緒にいたらアタシ達も殺されちゃうかも」
夏帆が錯乱状態のまま髪を振り乱しながら叫び、しおりが同調した。
まあ、普通はそうだろうが…。
「しかし連続殺人に発展する可能性も否めないぞ?」
「それなら尚更よ!」
「あ!夏帆!」
皆で居た方が安全だと含みを持たせて言ったが、逆効果だったようで夏帆は走り去った。
それを気に、皆思い思いに厨房を出て行ってしまう。
制止するのは不可能だと悟った私は皆が出て行くのを無言で見守った。
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