天網恢々
□紅之館 第一章
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4つ子で四季の名を持つ4人。
名付け親も中々粋な事をしたもんだ。
この春子と秋子は見分けが付かないが、他はどうなのだろうか?
よもや同じ髪型で同じ服装といった事はないだろうな…。
顔は4つ子なのだから同じで当然だろうが。
………?
私はある事に気が付き、操と喋っている春子と秋子を見比べる。
見比べてみると成る程その違いは明確になった。
「どうかなされましたか?」
「いや、何でもない」
春子が不思議そうに訪ねて来たので、ニヤリと笑いながらそれに返す。
そのやり取りを見、操も怪訝そうに私を見た。
春子は不思議そうに私を見る表情をそのままに
「では、立ち話も何ですし大広間へご案内致します」
「荷物はわたしが部屋までお運び致しますね」
秋子が操から二つの旅行鞄を受け取った。
その時操に妬ましげに睨まれたが無視を決め込む。
そして春子の案内で大広間へと向かった。
「ワタシ達の他にまだ誰かいるんですか?」
「はい。操さんと皐月さんの他に後8人のお客様がいらっしゃってます」
操の問い掛けに春子が答える。
8人、私達を含むと10人か。
「それ以外に人数が増える予定は?」
「いえ…ございませんけれど」
という事は客は合計10名。
今知り得ている使用人の安藤と藤堂姉妹を合わせれば15名になる。
まあこんな広い館では人数による窮屈さ等微塵も感じえないだろうが。
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